歯科医院を開業する前に知っておきたいこと
歯科医師は地域にかかわらず需要が多いため、開業を考えている歯科医師も多いかもしれません。歯科医院を開業しようと思っている場合、どのような手順で進めていくのでしょうか。また開業にあたっての注意点や経営に失敗しないためのポイントもご紹介します。
◼ 歯科医院を開業するためには
歯科医院の開業を漠然と考えているという歯科医師は多いかもしれませんが、具体的にどのような手順で進めていくのでしょうか。
・開業後のイメージを固める
具体的なことを決める前に、まずは開業後のイメージを固めていきます。自分が開業し、経営していく歯科医院をどのような医院にしたいのか、また数年後の将来像などを想像してみましょう。他の歯科医院で勤務していく中で、「自分が開業するならこのような診療を行いたい」「方針として〇〇を掲げたい」など考えていたことを確立させられるのが歯科医院の開業です。
方針や診療スタイルはもちろん、開業時期や開業したい場所、資金計画なども考えておかなければなりません。だいたいの開業時期を決めた上で、いつから準備を始めれば間に合うかを逆算してくとスムーズに準備が進むことでしょう。
・エリアや物件を決める
イメージが固まったら、開業したいエリアを絞って物件を決める工程に移ります。条件の良い物件はすぐに契約が決まってしまうことが多いため、物件選びは早めに行うことが大切です。エリアを決めるときには、患者様を集められるかが重要なポイントとなります。経営を安定させるためには患者様に来てもらう必要があるので、人が集まりやすいところや分かりやすい場所がおすすめ。都心部であれば駅からの近さ、郊外では駐車場の広さなども重要です。
どういった診療をメインとして提供するかによってもエリアの候補が変わってきます。審美歯科であればターゲットは女性であることが多いため、オフィス街の駅ビルやおしゃれなエリアを選ぶと良いかもしれません。小児歯科の場合は若い世代のファミリー層が多いような住宅街の近くを選ぶ必要があります。ターゲットと異なる場所を選んでしまうと、腕が良かったとしてもなかなか患者様が集まらない可能性があるため慎重に選ぶようにしましょう。
また今は人が多い場所でも、大学の撤退や町の衰退で人が少なくなることも考えられます。将来性がある地域かどうかも考えておく必要があります。
・資金計画を立てる
物件が決まったら一安心ですが、次は開業を目指してさまざまな環境を整えていく工程です。環境を整えるためにはお金が必要なので、物件が決まった段階で資金は足りるのかどうか計画をしっかり立てるようにしましょう。
まずは自分が持っている資金のうち開業に充てられる資金がどのくらいあるのかを知っておきましょう。全額自己資金で開業できるのか、ローンを組んで借り入れをするのか、など資金調達の方法はさまざまです。経営がうまくいけば返済できたとしても、うまくいなかければ返済によって赤字になってしまうことも。どちらの場合も想定した資金計画書を作成するなど、綿密に計画するようにしましょう。
・医院のデザインを決める
資金計画を立てると、医院の外装や内装などに使える額の目途もつくことでしょう。見た目ももちろん大切ですが、利用する患者様にとって医院内部の動線がスムーズかどうか、安全性や利便性が高いかどうかなども考慮する必要があります。細かい部分ではありますが、例えば靴を脱いで中に入ってもらうのか、靴のまま診療を行うのか、などさまざまな視点でデザインを考えるようにしましょう。
外装には好みを反映させることができますが、患者様に歯科医院として認識されやすいかどうかも大切です。交差点から見えやすかったり、たくさんのお店に囲まれた中でも目立つような外観にしたりと、工夫することで視認性が高まります。目立ちやすくするためには派手な色やイラストを使うのが簡単ですが、逆にスタイリッシュな見た目にすることでパッと目を引く外観になることもあります。
内装には、「清潔感がほしい」「広く見せたい」「採光を取りたい」などの希望を反映させることができます。外観は目立つような色を使っていたとしても、内装には落ち着いた色を使うことで患者様が安心して過ごせるような空間を心掛けるのも素敵です。スタイリッシュな外観にした場合、シンプルな内装の中にアクセントカラーを使うとおしゃれな雰囲気を演出できます。
・設備の選定
資金計画を立てたときに外装や内装に使える額だけではなく、設備にどれだけ投資できるかの目途もつくことでしょう。歯科医院には大きく分けて診療室と待合室、受付、トイレ、バックヤード、スタッフルームなどの空間があります。
診療室では歯科ユニット、バキューム、コンプレッサー、レントゲン、CT、オートグレーブなどの機器を使用します。待合室ではイスや時計、ゴミ箱、テレビ、キッズコーナーなど、受付では電話やレジ、コピー機、予約管理システムなど、バックヤードやスタッフルームには掃除用品やロッカー、スタッフ用の机やイスなどが必要です。
それぞれの設備や備品を選んで購入、設置しなければなりません。最新式の設備を使いたいと思っていても、資金が足りなかったり維持が難しかったりすることも。診療方針と設備レベルのバランスを考えて設備を選ぶようにしましょう。
・スタッフの採用や書類の提出
ここまでで医院内の準備はほとんど終了です。次に歯科医師や歯科衛生士、歯科助手、受付などのスタッフの採用、書類の提出などを行う工程に移ります。歯科医院の規模によっては経営者である歯科医師が一人で治療を行い、歯科衛生士が助手や受付も行っている場合もあります。
歯科医師と歯科衛生士は資格を持っている人を採用しなければならないため、資格の必要がない歯科助手や受付の採用よりも難易度が高いといわれています。特に歯科衛生士は人材不足であることが多く、採用に難航することもあります。しかし妥協してしまうと長続きせず、またすぐに採用活動を行わなければならない可能性もあるため、慎重に行うことが大切です。求人サイトや求人情報誌に掲載したり、歯科衛生士の専門学校に求人を出したりする方法を取ることができます。
また開業する際には、診療所開設届や社会保険手続、保険医療機関指定申請書といったさまざまな種類の書類を提出しなければなりません。診療所開設届を提出すると、保健所の人が歯科医院に内容に相違がないかどうかの確認を行います。提出したからといってすぐに開業できるわけではなく、受理されるまでに時間がかかることもあるため、できるだけ早めに書類を提出するようにしましょう。書類ごとに期限や提出場所も異なるため、確認を怠らないことが大切です。
◼ 歯科医院開業の注意点
歯科医院を開業する手順が分かったところで、経営していく上で知っておきたい注意点についてご紹介します。
・患者様が増えない
開業してから1~2年が経っても患者様が増えないことを悩む歯科医師も少なくありません。立地や物件選びを慎重に行ったつもりでも患者様が増えない場合は、改めて対策を考える必要があります。患者様は、歯について悩みを持ったときにインターネットで検索し、表示された名前を見て選ぶことがほとんどです。歯科医院の外観や看板を見て認識していたとしても、歯に悩みを持っていない段階では意識に残りません。そのため患者様を集めたい場合は、検索したときに上位に表示されるような対策をすることをおすすめします。
・スタッフ間のトラブル
どこの職場でも起こり得る問題ではありますが、歯科医院を経営していく上でもスタッフ間のトラブルが起こってしまうことがあります。仕事ができる・できないだけではなく、人間関係がうまくいかないことも。スタッフ同士の関係が円滑ではない場合、医院自体の雰囲気が悪くなってしまうこともあるため、早めに対策したいものです。スタッフの様子を見て、それぞれと話したり、定期的に食事会を設けたりと、負担のない程度に配慮をするようにしましょう。
・他の歯科医院との差別化
歯科医院の数は増え続けているため、患者様を集めるためには他の歯科医院との差別化が重要です。治療を行う際に患者様の満足度を上げることで、再度来院してくれる可能性が高くなります。歯科医師が最善と思う治療方法であっても、患者様にとっては同じように思わない場合もあります。患者様とのコミュニケーションを取りながら、信頼関係を築くようにしましょう。患者様一人一人の満足度を上げることで口コミが広がり、患者様が集まるようになるかもしれません。
◼ まとめ
歯科医院を開業するためには、まず開業後のイメージを固めることが大切です。診療方針や開業時期などをイメージすることで、準備がスムーズに進みます。イメージが固まったら、エリアや物件を決めて資金計画を綿密に立てていきます。外装や内装、設備にかけられる額の目途がついてから、それぞれを決めていく作業に移ります。スタッフを採用し、書類を提出したら歯科医院を開業の準備が完了となります。
開業にあたっての注意点として、考えられるトラブルや悩みをご紹介しました。患者様が増えない場合は検索した患者様に歯科医院の名前がヒットするような仕組みを作ることが重要であり、スタッフ同士のトラブルへの対策、他の医院との差別化なども考えることで経営がうまくいくようになるかもしれません。
岡田克哉建築設計事務所では、医院や歯科医院のデザインを行っています。患者様が落ち着いて診療を受けることができるような空間づくりを提案させていただきます。患者様だけではなく医師やスタッフの方にとっても良い環境を作れるように心掛けていますので、医院や歯科医院のデザインをご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。