【建築実例】クリニック開業に必要なポテンシャルと差別化
開業医として生き残っていくためには、他のクリニックとの差別化をしながら独自性を活かしていく必要があります。
患者様に求められるクリニックはどのようなものか、スタッフが働きやすい環境はどうつくるのか、といったこれからの開業に必要な知識を建築実例と合わせてご紹介しましょう。
コラムのポイント
・クリニックは『美観』『使い勝手』『温熱環境』が揃っていると良いでしょう。
・ターゲットを決めてコンセプトを明確にすることで、差別化されたonly oneのクリニックを造り上げることができます。
クリニックに必要な環境
クリニックは、医師の腕や外観だけでなく、患者様が過ごしやすく、スタッフも働きやすい環境であるために求められることがいくつかあります。
心落ち着く空間、診療に専念できる空間であることはクリニックに必要不可欠です。ただ、それだけでなくいかに美しい空間であるか、ということも重要です。
白を基調としたすっきりとした空間が美しいとされていましたが、昨今では様々な色を使いながらも、美しい空間のクリニックが増えてきています。暖色系で統一したり、寒色系を使いながらも落ち着く雰囲気に仕上げたり、個性的なデザインを随所に採用することで主張しすぎない美観を作り上げたり…など様々です。
使う照明や待合室の椅子、テーブルなども、何を選ぶかによって大きく雰囲気が変わります。患者様が来院された時に、素敵だな、ここに来てよかった、次にクリニックに行く時もここを選ぶな、と思ってもらえるような美しい空間であるかが大切です。
クリニックは医療を提供する場です。そのため、医療をスムーズに行うことのできる場である必要があります。美しさももちろん大切ですが、美しさとともに使い勝手のよい空間であることが大切です。
患者様をスムーズに診察室に案内できる、医療機器の持ち運びが簡単にできる、必要な時にすぐに取り出せて片付けもすぐにできる…といったスタッフの動線がスムーズであることはもちろんのこと、患者様の動きも簡単であることが求められます。来院してから診療を受けて帰宅するまでの動きが、初めての方でもわかりやすければとても使い勝手の良い空間となるでしょう。
通路の幅や家具のサイズなどを、バランス良く設計したり選んだりすることで使い勝手の良いクリニックにすることができます。
過ごす場所の温度や湿度が整っているかも大切です。暑すぎたり寒すぎたりする空間には、人は不快を感じます。しっかりとした断熱構造を採用し、省エネで過ごしやすい空間を保ちましょう。適切な温度環境は、患者様の満足度にも比例します。
また、温度や湿度だけでなく、声が響かない空間であるかどうかも大切です。診療は患者様のプライベートなことをたくさん話すため、声が漏れない様に配慮する必要があります。部屋の造りによっては、残響時間によって人の声が聞きづらくなることも考えられます。見た目だけでなく快適な環境を作り出しましょう。
差別化でonly oneのクリニックに
唯一無二のクリニックとして長く生き残っていくためには、他のクリニックとの差別化が必要です。
地域性や専門性、ご自身の経歴を考慮してまずはターゲットを絞りましょう。
若者や若いファミリー世帯が多い場所で開業するのと、高齢者が多い場所で開業するのとではターゲットが大きく変わります。それに伴い、必要な設備やスタッフの人数が変わってきます。例えば歯科医院を開業する場合、待合室にキッズスペースが必要なのか、年配向けの雑誌や本を多く準備した方がいいのか、といったように必要なものが変わります。
どのような方をターゲットにして、どんな武器を用意出来るか、そしてその効果をどうやって最大化させるのか。これらが明確になることでONLYONEのクリニックとなり、結果的に他のクリニックとの差別化が出来るのです。
コンセプトが明確であれば、常に患者様に足を運び続けてもらうことができ、ぶれない集患、診療をすることができます。
コンセプトとは、『全体を通した基本的な考え方』『はじめから終わりまでの一貫した考え方』のことをいいます。開業準備やクリニックの経営を進めていく中で、多くの判断をして決断を下す場面で指針となるのがコンセプトです。
クリニックのコンセプトは、思い描く理想のクリニック像を言葉で表したものにしましょう。このコンセプトに沿っているかどうかを考えることで、一貫した判断、決断を下すことができるのです。専門性や強みを盛り込んで決めていきましょう。
そしてこのコンセプトを実現するために、具体的な立地や設備、ロゴマークやイメージカラー、スタッフのスキルや人柄、雰囲気などを考えていきましょう。
コンセプトを明確にすることで、クリニックの差別化ができます。そうすると、このクリニックが良い、このクリニックで働きたい、このクリニックで診てもらいたいという、いわばクリニックのファンになる人々が出てきます。このようなファンの方々が生まれることでファンがファンを呼び込み、様々な好循環を起こすことができます。
ここを目指して、ONLYONEへの道を突き進んでいきましょう。
クリニックの建築事例
では、ONLYONEにこだわって造られたクリニックの建築実例を見てみましょう。
狭小敷地のクリニックの建替えプロジェクトです。
敷地の余裕のない木造でありながら、
置床構法を採用する事によりバリアフリー化を実現しました。
水平方向への広がりも十字型の大開口により得ると同時に、
垂直方向への広がりを確保すべく待合室、診察室を
それぞれ吹き抜けのある空間とし、空間の豊かさを獲得しました。
2Fは倉庫と医局、3Fは医務室という構成としました。
吹抜けの場合、冬の寒さが気になる所ですが、
温水式の床暖房とタイルの組み合わせで冬も快適です。
また、夏の西陽対策として大開口の西側窓には
LOW-Eガラスを採用しました。
この建物は7年前に建てられたクリニックの増築工事として建てられました。
田園の中にぽつんと建つ建物だったので、
周りの自然やスケール感との関係から、
なるべく建物を幾つものヴォリュームに分割せず、
一つの大きなヴォリュームとして扱いたいと考えました。
そこで、地面が隆起して一つの建物になったようなイメージで、
スロープ・壁・屋根をひと筆で描いたように連続させるデザインを採用しました。
室内空間は絞りの柱が林立していて、
その林のなかに診察スペースが一見ランダムに配置されています。
そして南側に計画された水盤に反射した光が天井をゆらゆらとうつろいでいます。
森の中で葉と葉の間から光が漏れる風景を思い起こさせます。
「曲面で領域をつくる皮膚科クリニック」
医療モールに入る皮膚科のクリニックです。
限られたテナントスペースに必要な空間をそれぞれ部屋として作っていくと、
とても狭苦しいクリニックとなってしまうことが想定できました。
そこで、部屋としてきちんと区画されていなくても良い空間を
凸型の曲面を使ってコーナーとして設え、
広がりのあるのびやかな空間を目指しました。
同時に曲面で囲われない残った空間が
スピード感をもった移動空間(通路)になる事を期待しました。
ケガをした子どもから自費治療のシニアの患者様までを対象とするため、
ガラスモザイクタイルやカーペット、突板の木目、布といった
素材感のあるものを組み合わせるほか、
間接照明を効果的に使うことで、シックでありながら、
少し着くずした感じのデザインとしています。
その他の建築実例はこちら》》》
only oneのクリニックを
開業医としての新たなスタートは、これからの人生を大きく変えることとなります。他のクリニックとの差別化をしながら、唯一無二のクリニックを造り上げていきましょう。
建物やクリニックをつくるということは人生最大のイベントのひとつです。
決して不注意なミスは許されません。
我々は常に、もし自分がこのクリニックをつくる施主だとしたらどうするか、常に施主様の立場を考えながら、設計や監理にあたっています。
スタッフや先生、患者様にとって良質なクリニック設計、リフォームは岡部克哉建築設計事務所にお任せください。