クリニック経営の心構えと支援する資格|よくある悩みも
クリニックの開業を検討しているお医者さんの中には、開業場所の選定といった準備に取り掛かっている人もいるかもしれません。開業の準備期間は余裕を持っておくことが大切ですが、具体的な準備と同時に心構えをしっかり持つことも忘れてはなりません。クリニック経営の心構えや、経営していく上で想定される悩み、クリニック経営の支援といった経営に関して知っておきたいことをまとめます。開業前に心構えを持つと同時に、知識も身に付けておきましょう。
◼ クリニックを経営する心構え
クリニックの開業を検討しているお医者さんの多くは、これまで勤務医として経験を積まれてきたことでしょう。勤務医ではなく開業医としてクリニックを経営するにあたって、頭に入れておきたい心構えをご紹介します。
・勤務医との違い
クリニックを経営する際には、勤務医と開業医の違いを頭に入れておく必要があります。勤務医と開業医、どちらも同じお医者さんであり、どういう働き方であれ患者様の健康のために尽力することに変わりはありません。しかし病院に雇われている勤務医に対して、開業医は自分でクリニックを経営し、スタッフを雇う側であるという違いがあります。
勤務医の場合、診察や治療などの業務以外、会計や手続きといった事務作業は病院側に任せることができます。開業医は事務作業やスタッフの採用といった業務を自分で行わなければなりません。これらを担ってくれるスタッフを雇うこともできますが、経営がうまくいっている場合に限られます。
また開業医はクリニックの診療や経営に関すること全ての決定権を持ちますが、その代わりに全ての責任を負う必要があることも忘れてはなりません。トラブルが起こった際、勤務医であれば病院が責任を負ってくれることもあったかもしれませんが、経営しているクリニックで何か起こったときには院長が責任を負う必要があります。スタッフを雇っている場合は尚更、スタッフの生活を守る責任もあるということを頭に入れておくようにしましょう。
・患者様本位の医療を提供
クリニックを経営する上での心構えとして、患者様本位の医療を提供するということがあげられます。勤務医であっても基本的には同じですが、開業医の場合は患者様が求める医療を提供することが集患や利益アップにつながります。長い期間かけて準備を進め、ようやく開業にこぎ着けたにもかかわらず患者様が集まらなければ元も子もありません。患者様本位の医療を提供するためには、まずは患者様のニーズやクリニックに対する不満を把握した上で、それらを改善していく必要があります。
例えばクリニックの立地によって患者様のニーズは異なります。オフィス街のクリニックであれば患者様は仕事の合間や仕事前、仕事後の時間で訪れていることが多いはずなので、できる限り待ち時間を短縮することが求められています。郊外の住宅街にあるクリニックで子供連れの患者様が多い場合はキッズスペースを充実させること、トイレにおむつ替えシートを設置することなどが改善点としてあげられます。
クリニックは高度な医療を提供することよりも、患者様が求める診療内容を察知したり、院内環境を整えたりすることの方が集患においては重要であることも。院内環境の他にも、患者様の層に合わせた診察内容や診療費、スタッフの対応といった項目もそれぞれ改善していくことが大切です。
・スタッフとの信頼関係
クリニックを経営していく上で、働いてくれている看護師や受付などスタッフとの信頼関係を築くことも大切です。スタッフとのコミュニケーションを頻繁に取ったり、感謝の気持ちを伝えたり、一つ一つは小さいことでも積み重ねていくことで信頼へとつながります。また人間同士なので相性の良し悪しはあるかもしれませんが、できるだけトラブルが起こらないようにしたいものです。スタッフ同士がギスギスしていると患者様にも伝わったり居心地が悪く感じられたりするかもしれません。スタッフ同士でトラブルが起こっていないかどうかに気を配ることも忘れないようにしましょう。
◼ 経営する上でよくある悩み
「クリニックの経営を成功させよう」「患者様を集めて人気のクリニックにするぞ」と、強い思いを抱いて開業準備を始めることでしょう。クリニックを経営していると、何かしらの悩みは出てくるはず。よくある悩みを開業前から想定しておくことで、早めに対策を講じることができます。
・患者様が増えない
クリニック開業の準備段階では、たくさんの患者様が集まることを想定しているかもしれません。しかしよくある悩みとして、想定よりも患者様が増えないということがあげられます。クリニック経営の心構えでご紹介した通り、患者様本位の医療を提供することが大切です。院内環境をメインでご紹介しましたが、診療内容など他の項目でも患者様のニーズを察知することが何より重要です。
例えば、お医者さんとしては最善の治療方法があると考えていたとしても、患者様はとにかく薬をもらいたいだけだと思っている場合があります。医者としての方針を伝えることも大切ですが、患者様が何を求めているのかを感じ取って寄り添うことも大切です。方針を押し付けたと思われると患者様が離れていってしまう可能性もあるためです。患者様を引き留めるために全てを患者様に寄せる必要はありませんが、お医者さんが正しいと思う範囲内で患者様の要望に寄り添うことも集患にとって大切なことだといえるでしょう。
・スタッフの離職
クリニック経営でよくある悩みの二つ目が、スタッフの離職です。スタッフとの信頼関係が重要であることもご紹介しましたが、信頼関係を築けなければスタッフの離職につながってしまうこともあります。スタッフが離職すると新たに採用活動を行わなければならず、広告宣伝費が増えたり採用のために手間がかかってしまったりとデメリットがたくさんあります。そのためスタッフが悩みを抱えていそうなときやトラブルが起こっているときには、放置するのではなく話を聞くといった対応をするようにしましょう。
・スタッフや患者様とのトラブル
スタッフ同士のトラブルや患者様とのトラブルも、クリニック経営における悩みとして耳にすることがあります。スタッフ同士でトラブルが起こっていると患者様にも雰囲気が伝わることも考えられますし、患者様とのトラブルがあれば他の患者様に噂が広まってしまうことも考えられます。そういったトラブルが起こった場合、自分の手で解決させなければならない責任が開業医にはあるということを頭に入れておく必要があります。
・収益が増えない
集患とも関連性がありますが、収益が増えないこともクリニック経営の悩みとしてあげられます。患者様が集まらなければ収益も増えませんが、収益が増えないことの理由はそれだけではありません。例えば光熱費や消耗品、人件費といった支出の部分で無駄遣いしている点はないかどうか見直すことも大切です。
◼ クリニック経営の支援
開業医はお医者さんとしての業務はもちろんのこと、同時に経営をしなければなりません。しかし開業したてのときは経営のプロではない中で、さまざまな課題が現れ続けるクリニック経営の支援を行っている人たちもいます。クリニックを経営する上での心構えやよくある悩みをご紹介しましたが、経営を外部から支援するために生まれた資格についても知っておきたいものです。
・医療経営士
医療経営士とは日本医療経営実践協会が認定している資格のことであり、3級から1級まで分かれています。受験科目は全ての級において筆記が行われ、1級のみ口頭面接も実施されます。日本医療経営実践協会による試験に合格し、協会に登録することで医療経営士を名乗ることができます。
医療機関をマネジメントすることを目的に、医療や経営に関する知識を身に付け、経営における課題を解決する能力を育成します。医療経営士の資格取得のメリットとしては、医療に関するお金の流れが把握できること、クリニックの院長や事務長との信頼関係を築くことができるといったことがあげられます。
・医業経営コンサルタント
医業経営コンサルタントとは、日本医業経営コンサルタント協会が認定している資格であり、受験項目は筆記試験と論文の2つです。医療保険制度といった法制度や税制、会計などの知識も問われます。医療に関する施設を経営するために必要な知識を問われるため、医療や介護、福祉などの施設から依頼を受けて改善するための業務を行います。医療機関は経営のプロがいないことも多々あるため、外部からの助言がほしいときに求められる人材です。
◼ まとめ
クリニックを開業するためには開業場所の選定やスタッフの採用などさまざまな準備を行わなければなりません。開業準備を進めながらも、クリニックを経営するための心構えも知っておく必要があります。クリニックを開業して経営者になるということは、勤務医とは異なるさまざまな責任が生じてきます。またクリニックを経営する場合、患者様本位の医療を提供することが直接的に集患へとつながることも頭に入れておくようにしましょう。患者様を集めて収益を上げることだけではなく、スタッフとの信頼関係も大切にしましょう。
岡部克哉建築設計事務所では、クリニック開業時の設計監理を行っています。患者様が居心地良く過ごせるようなクリニックを作るための環境を施主様と一緒に考えていければと思っております。自分が施主様であればどうだろうかということを常に意識しながら、最適なプランをご提案させていただきます。クリニック開業をご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。