なぜ?多くの医師が歯科医院開業を失敗する理由
巷にあふれる歯科医院。そういえば、あそこに新しく出来たと思っていたけど、いつの間にかなくなっている…ということも珍しくありません。
意気揚々と開業したはずなのに、しっかりと開業や経営の準備もしていたはずなのに、それでも廃業しなくてはならないのは、幾つかの理由があるからです。
なぜ多くの開業医が失敗してしまうのか、その理由は何なのか、について見てみましょう。
コラムのポイント
・多くの開業医が失敗するポイントは、資金面での見込みの甘さ、集客の失敗、開院場所を誤る、人間関係構築能力不足、開業コンサルタント任せ、差別化の甘さ、などが挙げられます。
・患者様が継続して足を運びたい、行ってみたいと思えるような外観、内装に仕上がっているか、コンセプトがぶれていないかどうかは、安定した集患につながります。
・患者様の視点に立って、選ばれる歯科医院開業を目指しましょう。
見込みの甘さが失敗を招く
開業歯科医としてやっていきたい。そう決意した歯科医院は、今やコンビニよりも多いと言われ、乱立しているのが現状です。
口内環境は老若男女問わずケアするものなので、職としてもなくなる心配がなく安定していると思われがちですが、実際はそううまくいくことばかりではありません。
医師とはいえ、開業するとなると経営者となります。入念なリサーチや状況把握、経営の視点が必要になります。開院しようとしている場所はどのくらいの人口で年齢の構成比はどのくらいなのか、安定的な集客は望めるのか、といった事前の見込みが甘いと、安定的な集患ができないという状況を招いてしまいます。また、医療機器の購入やテナントなどの内装費用、人件費、融資の利払いなど多額の費用も必要です。
失敗を避けるためには、確実な見込みをしておく、ということが重要です。
多くの開業医が失敗するポイント
多くの開業医が失敗する理由として、共通することがいくつかあります。
⒈ 自己破産に陥る
開業に多額の費用が必要になる歯科医院。建物を一から建てるとなると、ゆうに5000万円は超えてしまいます。この開業にかかる費用の半分以上を融資で補う、というケースは少なくありません。開業した以上は安定した経営を行い、利益を出し続けていかなければ、あっという間に赤字になってしまいます。利益が出ず、収入が減り続けてしまうことで、廃業に追い込まれてしまいます。
廃業後、再び勤務医として働き出したとしても、残った多額の借金は無くなりません。勤務医の給料の中で生活をしながら多額の借金を返済していく、という生活に無理が生じ、最終的に自己破産してしまうのです。
⒉ 集患の失敗
開業しておけば、勝手に患者さんの方からやってくるというわけではありません。しっかりと必要としている人に、存在を知ってもらい、足を運んでもらう必要があります。
患者様のどんな悩みを解決できるのか?どんな欲求を満たすことができるのか?他の歯科医院ではなく、あなたが、あなたの歯科医院が選ばれる理由は何なのか?どんな特徴があるのか?といったことをアピールできていないと、集患できず、利益につながらず、失敗してしまうのです。
⒊ 開院場所を誤る
どこに開院するかはとても重要です。
開院前には、人口ピラミッドや年代別構成比、昼夜間人口比率の調査、一人暮らしや住宅所有関係別世帯比率の調査、業種業態や就学の割合調査などを行います。そこで出てきたデータを元に、開院するかどうかを検討していきます。しかしこれらの情報が不足することで、需要が望めない場所に開業してしまうと、安定的な集患に繋がらないという結果になってしまいます。
⒋ 人間関係構築能力
高い診療技術や治療技術を持っていることはもちろん重要です。しかし、それだけでは経営は成り立ちません。
この歯科医院は、自分の悩みをしっかりと聞いた上で最適な治療をしてくれるか、寄り添ったコミュニケーションを取ってくれるか、などを患者様はよく見ています。医師だけでなく、受付のスタッフ、歯科助手に対しても同じです。患者様が繰り返し訪れてくれるかどうかは、医師やスタッフの対応が大きな役割を果たします。
この歯科医院は信頼できるか、ということを常に見られているという視点を忘れず、患者様との信頼関係を築いていくことができなければ、安定した集患は難しいでしょう。
⒌ 開業コンサルタント任せ
開業に向けてのノウハウの多くは、専門の業者が握っています。開業当初は、専門外のことばかりでわからないことも多いので、任せることでスムーズに計画を進めていくことができるでしょう。
しかし、すべてを任せっきりにしてしまうと、いざ決断をしなければならない場面、采配を振らなければならない場面で何もわからない、できない状況を招いてしまいます。継続的に経営し続けていくためにも、すべてを投げてしまわず、身に付けるべきものは身につけていかなければ、身を滅ぼしてしまいます。
⒍ 差別化が甘い
集患の失敗にも通じるものがありますが、他の歯科医院との差別化ができていないと、失敗に終わる可能性が高くなります。いくつもある歯科医院の中から選び続けてもらうためには、ここだから通う!と思わせる特徴なり技術なりを備えておく必要があります。
駅近やショッピングモール内以外に開業する場合、ある程度決まった人数の患者様を取り合う状況になります。その競争の中、勝ち残り続けていく必要があるのです。
通いたい!と思わせる建物かも重要
患者様に継続して通っていただくためには、ここに通いたい、ここで治療してもらいたい、ここは安心して任せられそうだ、と思ってもらえるような建物かどうかも重要です。
歯科医院を設計管理する際は、統一感があるかが重要です。外から見た時の雰囲気と、一歩足を踏み入れた時のイメージが統一されているか、です。
統一感を出すためには、コンセプトに合っているか、ターゲット層が好む内装か、などが大切です。働く人にも大きく影響する部分なので、歯科医院のコンセプトや方向性は、ブレないように定めておきましょう。
患者様を想った歯科医院の経営を
開業に失敗する理由をいくつか挙げてきました。あらかじめこのような情報を知っておけば、失敗は免れることができます。
ただ、失敗を避けるための知識ばかりをつけるのではなく、患者様の視点に立ってみることも大切です。自分が歯医者に通うなら、どんな空間で治療を受けたいか、どんな診療や治療についての質問をしてほしいか、どう関わってほしいか…。患者様が求めていることが、自然と見えてきます。患者様として、経営者として、それぞれの目線に立ったうえで、求められ続ける歯科医院を目指しましょう。
岡部克哉建築設計事務所は、良い設計をして素敵な建物を作る事の効果を最大限高める事、これを突き詰めていきたいと思っています。素敵な建物が出来れば、それを所有する方の所有欲も満たされますし、それを使う人も、大切に建物を使おうとしたり、こんな素敵な建物で働いている自分にプライドを持てたり。また、素敵な建物で治療を受けることで満足感を高めてくれる患者さんも現れます。
建物とそこで行われる診療などの行為がシンクロして、素敵な物事の始まりが沢山うまれる事を願っています。