【必須】医院開業前にしておく10の準備とそのポイント
医院開業に向けてしておくことはたくさんあります。
段取りよく効率的に準備を進めていくための、医院開業前にしておく準備をまとめて御紹介します。
コラムのポイント
・医院開業に向けてしておくことは、コンセプトの決定、開業地の決定、事業計画、資金調達、リスクマネジメント、外観・内装デザインの決定、医療機器の選定、各種手続き、職員募集、広告宣伝です。
・直前に焦らないよう、医院開業に向けて確実に準備を進めていきましょう。
医院開業後の存続率
厚生労働省発表の2017年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況によると、2017年10月1日現在、全国の医療施設総数180,909 施設のうち、休止・1 年以上休診の施設を除いた活動中の施設は178,492 施設となっています。
この医療施設は2016年に比べ419施設減少、病院は8,412施設で30施設減少、一般診療所は101,471施設で58施設減少、歯科診療所は68,609施設で331施設減少しています。
やむおえない状況を除いても、毎年多くの医院が廃業しているのが現状の中、存続し続けるためには開業時の準備が大きな鍵を握ります。
開業段階で、医院・クリニックの土台となるコンセプトや開業地、内装や設備投資などをしっかりと行っておくことで、開業後の不安を減らし心強く経営を続けることができるでしょう。
開業前にしておく10の準備
開業前にやることはたくさんありますが、ポイントを押さえておけば重要なことに時間を使い、集中して進めることができます。
コンセプトとは、『全体を通した基本的な考え方』『はじめから終わりまでの一貫した考え方』のことをいいます。開業準備やクリニックの経営を進めていく中で、多くの判断をして決断を下す場面があるでしょう。その時に指針となるのがコンセプトです。
クリニックのコンセプトは、思い描く理想のクリニック像を言葉で表したものにしましょう。このコンセプトに沿っているかどうかを考えることで、一貫した判断、決断を下すことができるのです。
クリニックの外観や内装は、患者様の目を引くための大切な要素です。しかし、どれだけ素敵なクリニックを建設したとしても、求められていない場所であれば集患し続けるのは難しいでしょう。立地条件は開院時も将来的にも大きな影響を及ぼします。現存のクリニックを建て替える、土地を譲ってもらった、などの条件がなければ、人口や世帯数、出生率などを参考にしながらプロに相談して開業候補地を探してもらいましょう。
また、開業地は必ずご自身の目で見て、周辺地域の様子や人の流れを確認しましょう。目指すクリニックにターゲット層、世帯層が合致しているかを把握しておくことが大切です。
どのようなクリニックにするのかといった事業計画を立案しましょう。開業地はどこにするか、クリニックを建てるのか賃貸にするのか、医療機器はどのようなものを使ってどんな診療を行うのか、スタッフはどのくらい雇って開院するのか、来院見込み患者数はどのくらいで、採算はどのくらいか…といった内容を検討します。
立てた計画は、資金調達時に使う為にも事業計画書にまとめましょう。事業計画書とは、事業内容や企業の戦略・収益の見込みなどを説明するための文書のことです。事業計画書は、クリニックの開業を客観的に見つめ、改善するヒントにもなります。
事業計画書があることで、クリニック開業の大切な要素をわかりやすく伝えられるだけでなく、熱のある内容であれば融資を得やすくもなります。
金融機関に融資の申し込みをする場合、先ほどの事業計画書の信憑性は厳しくチェックされます。毎月返済できるのか、人間的に返済能力はあるのか、といった審査を本部が行います。
安定した経営が見込めるか
人口統計に基づいた来院患者数、地域人口の流動性など細かく分析した上での収益予想がされているかを審査されます。提携病院や訪問診療との提携などをアピールは有効です。
人間的に信頼できるか
勤務医時代の年収や経験実績、診療方針、自己資金額などが評価されます。実績を積んでいるだけでなく、貯蓄もしっかりとあれば返済能力があるとみなされます。
これらを審査されることは覚悟しておきましょう。
また、多額の融資資金になるほど保証人や担保提供を求められることがありますので、事前説明が必要です。開業後に不足資金を借りることは難しいので、可能であれば開業時に多めに借りておきましょう。医療機器は開業と同時に購入しておく方が、返済計画などが立てやすくなります。開業後は、運転資金として1,000〜1,500万円は確保しておけるよう準備をしておきましょう。
開業することで、勤務医時代とは生活スタイルも責任も大きく変わります。開業後のリスクマネジメントは早い段階でしておきましょう。
いつでも相談できる顧問弁護士と連携をとる体制を整えておくとよいでしょう。
健康
勤務医であれば、何か起こったときには代診や他の医師と調整することも可能です。しかし開業医となると、すべての責任が自分自身に降りかかります。少しでも休まざるをえない状況になれば、クリニックとしての信頼を大きく失うことも考えられます。それだけでなく、収入が激減し生活へも大きく影響します。開業するのであれば、自身の怪我や病気、事故への備えは手厚くしておきましょう。
土地建物や資産
近年、台風や震災などによる災害が増えています。災害で被害があったときの備えをしておきましょう。
損害保険に入る場合は、補償範囲を検討し必要な補償を受けられるものを選びます。建物は補償対象だが医療機器は対象外、ということもあります。補償金額も確認しておき、必要な時に必要な補償が受けられるよう保険設計をしておきましょう。
医療トラブル
クリニックを経営していく上で、患者様やそのご家族とのトラブルは避けがたい問題です。経営者である以上、医療過誤、医療事故の発生、賠償責任など求められるリスクがあります。開業医向けの医師賠償責任保険などに加入しておき、自分だけでなく、スタッフも守る備えをしておきましょう。
クリニックの内装に関しては、配慮するポイントがたくさんあります。働きやすいスタッフの導線や医療機器の配置、プライバシーが守られたカルテの保存場所、診療中の声が漏れないような環境、患者様がリラックスして待てる待合室など挙げればきりがありません。そのためクリニック建築の実績が多く、内情もよくわかっている設計事務所に依頼しましょう。ウォーターサーバーやソファ、スリッパなど、必要になる備品もトータルコーディネートし早い段階で決めておくことで、より洗練されたクリニックになります。
外観も、清潔感のあるスタイリッシュなデザインにすることで、視界に入り記憶に残り、地域に根ざしていくことができます。建築実例を参考に好みのデザインを選びましょう。
医療機器は使用年数を考慮して選びましょう。
開業時に揃えることが理想ですが、レントゲン装置のような長期間使用するものは購入、CR装置やカルテのような数年後に買い替えが想定されるものはリース、といったように分けることで開業時の負担を抑えることができます。リース料には固定資産税・動産総合保険が含まれており、費用計上もできるので費用を平準化できます。
クリニック開業のためには、いくつか必要な手続きや申請があります。
◼︎ 保健所
診療所開設届
◼︎ 厚生局
保険医療機関指定申請書
◼︎ 税務署
個人事業の開廃業等届出書
給与支払事務所等の開設届出書
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特例適用者に
係る納期限の特例に関する届出書
青色申告承認申請書
青色事業専従者給与に関する届出書
◼︎ 労働基準監督署
労災保険指定医療機関指定申請書
労働保険関係成立届
◼︎ 公共職業安定所
雇用保険被保険者資格取得届
雇用保険適用事業所設置届
これらはごく一部の申請なので、必要書類については各関係機関に必ず問い合わせるようにしましょう。
どのような人材が必要なのか、どこまでのスキルを求めるのかといった人物像だけでなく、雇用条件をしっかりと決めて募集するようにしましょう。求職者との連絡や面接など、開業準備と並行して進めるのは大変かもしれません。しかし、自身の目で見て人となりを理解し、相性も考えた上で採用を決めた方が、後のトラブルを避けることができます。
開業後の仕事をスムーズに進めていくために、スタッフの核となる人物を雇用するためにも妥協せず選びましょう。
患者様はwebサイトを見て、口コミを見て、といった理由で来院を決めます。スマホの普及率が高い昨今では、いかに効果的に広告を出し、webサイトを充実させておくかが重要です。
診療科目や診療日、休診日、連絡先、お問い合わせ、院長挨拶、など患者様にとって必要な情報を発信していきましょう。
事前準備がクリニック経営の鍵を握る
クリニック開業に向けて、やるべきことは山ほどあります。優先順位をつけながら、必要な準備を確実に行っていきましょう。
建物やクリニックをつくるということは人生最大のイベントのひとつです。
決して不注意なミスは許されません。
我々は常に、もし自分がこのクリニックをつくる施主だとしたらどうするか、常に施主様の立場を考えながら、設計や監理にあたっています。
スタッフや先生、患者様にとって良質なクリニック設計、リフォームは岡部克哉建築設計事務所にお任せください。