クリニック開業時のポイントと差別化の方法について
クリニックを開業する際には、どのようなポイントに気を付けて準備を進めれば良いのでしょうか。開業場所の選択肢には戸建てやビルのテナント、医療モールなどがあり、それぞれ特徴が異なります。また他のクリニックとの差別化を図るために気を付けたいことについてもご紹介します。
◼ クリニック開業場所の選択肢
クリニックを開業する際、準備の早い段階でクリニックの開業場所を決めることでしょう。エリアはもちろんですが、開業場所の形態も考える必要があります。戸建てとビルのテナント、医療モール、それぞれの特徴やメリット・デメリットをご紹介します。
・戸建て
戸建てのクリニックは、文字通り住宅と同じように戸建てでクリニックを建てることをいいます。開業を考えているお医者さんの中には、院内の動線や雰囲気の理想がある人もいるかもしれませんが、戸建てだと理想を叶えやすいのが一番のメリットです。戸建ては都市部よりも郊外に建てられることが多く、郊外の場合は駐車場を確保することでより患者様に来てもらいやすくなります。
一から土地を探して購入し、建設するため、開業までの準備に時間がかかってしまいます。その分費用も高くなることが多いため、開業資金の調達や経営の計画をしっかり立てておく必要があります。
・ビルのテナント
ビルのテナントにクリニックを開業する場合、他の形態よりもたくさんの候補の中から物件を選ぶことができます。戸建てを建てにくい都市部であっても、立地の良いところに物件を確保しやすいのがテナントのメリット。
もともとあるビルに入る場合はレイアウトの自由度が低くなってしまったり、他のテナントとのバランスが大切だったりするデメリットも。医療機器の搬入が可能かどうか、医療施設として不備はないか、など事前に確認するべき項目も多いため注意が必要です。
・医療モール
医療モールとは、専門の異なるクリニックや薬局が集まっている施設・エリアのことをいいます。クリニックや薬局だけで構成されているタイプとショッピングモールの中に医療エリアが設けられているタイプ、戸建てのクリニックが集まっているタイプの3種類があります。いずれの場合も初期費用を抑えられるのがメリットであり、内装や医療機器などを自由に選べない場合があることがデメリットとなります。
ショッピングモールの中に医療エリアがある場合、近隣に住む人に認知されやすいため患者様が集まりやすい傾向にあります。買い物や外食などと一緒に予定を済ませることができるため、利便性が高いのが特徴です。クリニックや薬局だけで構成されている2つのタイプも、他の科と連携を取れることで患者様の安心感につながるだけではなく、お医者さんにとっても他の科のお医者さんとの関係性を築くことができます。
◼ クリニック開業時のポイント
クリニックを開業する際には、どのようなポイントに気を付けておくべきなのでしょうか。開業予定までに準備が間に合わなかったり、立地選びに失敗したり、経営がうまくいかなくなったりといったことのないよう、しっかり準備を進めたいものです。
・準備期間に余裕を持たせる
クリニックを開業するまでには、さまざまな工程を踏まなければなりません。開業予定までに間に合わせるためには、スケジューリングをきっちりしておく必要があります。一般的には戸建てのクリニックで約1年半、テナントでは約1年かかるといわれています。勤務医として働きながらコンスタントに準備を進められる自信がない場合は、準備期間に余裕を持たせて計画しておくことをおすすめします。
開業することが決まったら、まず具体的なイメージを固めた上でスケジュールを立てることが大切です。スケジュールを建てることで、どの段階で費用がかかってくるかが分かるため、いつまでに資金が必要かどうかも明確になります。
・立地選び
はじめにクリニックの形態についてご紹介しましたが、立地選びもクリニック開業にあたって重要なポイントとなります。都市部と郊外、どちらに開業する場合であっても、患者様が集まりやすい場所を選びたいという点は同じです。都市部であれば駅の近くや大通りに面した場所、郊外であれば建物が目立ちやすい場所やお店が集まる場所の近くなど。医療モールだと認識されやすく利便性が高いイメージもあるため、立地選びとしては良い選択だといえるでしょう。
駅前や駅から徒歩数分のところにあるからといって必ずしも立地が良いというわけではありません。ビルの中には看板に制限がある場合もあるため、看板を出せなければクリニックがあることを認識してもらいにくくなります。建物に高さがなかったり奥まったりしていたりする場合も同じです。駅から近いからといってすぐに物件を決めるのではなく、実際に赴いて歩いてみて、患者様の目線で考えてみると良いかもしれません。
・経営計画
開業資金を全て自己資金でまかなえるというお医者さんもいるかもしれませんが、借り入れをする場合は、融資を受けるために事業計画を提出する必要があります。融資のためだけではなく、実際に経営していくにあたって必要なものでもあるため、真剣に考えるいいタイミングとなるでしょう。
開業前には経営がうまくいく想定だったとしても、実際に経営を始めると1~2年経ってもなかなか患者様が増えないといった悩みが出てくることもあります。患者様が増えない場合は、看板や広告を使った宣伝を行ったり、インターネットで検索したときにヒットするような仕組みを作ったりことが大切です。また一度来てくださった患者様が「次も診てもらいたい」と思うように、ニーズを理解して信頼を得るようにしましょう。
・スタッフの採用
医院内の準備が整ったら、いよいよスタッフの採用をする工程に移ります。医師が必要な場合は医師、看護師や助手、受付など必要な人材はクリニックによって異なることでしょう。歯科医院の場合は歯科衛生士や歯科助手を採用する必要があります。資格が必要である医師や看護師、歯科衛生士は特に採用の難易度が高いといわれているため、できるだけ早めに動き始めることをおすすめします。
なかなか良いと思える人材に出会えないと焦ってしまいますが、妥協してしまうとトラブルの原因になったり離職につながったりすることもあります。開業時の大変なときを共にしてくれるスタッフなので、しっかり連携を図りながら信頼関係を築いていくようにしましょう。
◼ クリニックの差別化
クリニックを経営していくためには、患者様を集める必要があります。そのためには他のクリニックとの差別化を図ることが大切です。どのような面で差別化を図れば患者様を集めることができるのでしょうか。
・立地や利便性
患者様の視点に立つと、「このクリニックに通いたい」と思う条件の一つが立地や利便性であることが多いはずです。都市部であれば駅からの近さ、郊外であれば広い道沿いで駐車場があることが好立地の条件となります。駅から近い場所に開業したいと思った場合、目立つ場所が見つかれば良いですが、見つからなかった場合は看板や広告で宣伝する必要があります。宣伝にも費用がかかってしまうため、立地との兼ね合いも考慮するようにしましょう。
・間口の広さ
立地も重要ですが、間口の広さという点でも他のクリニックとの差別化を図ることができます。同じ敷地であっても、間口が狭いよりも間口が広い方が患者様にとって安心感を得られることがその理由です。間口が狭く、中がどうなっているのかが分からないクリニックよりも、間口を広く取って窓から中の様子が見えるようなクリニックの方が安心しますよね。そのような患者様の気持ちを考えた設計をすることが、差別化につながります。
・ホームページを充実
看板やチラシなどの広告でも近隣の人にクリニックの存在を周知させることはできますが、名前を知ってもらうだけでは患者様は集まりません。実際に病院に行こうと思った人が病院選びをする際にチェックするのはホームページであることがほとんどだからです。看板やチラシによって名前を認識してもらっておくことはもちろん大切ですが、ホームページを充実させることで患者様が集まりやすくなります。
お医者さんの顔写真や経歴、診療方針、クリニック内の写真を掲載することで、患者様に情報を知ってもらえます。中の様子が分からないクリニックよりは、少しでも情報を知っている方が患者様も行きやすい心理が生まれます。
・デザイン性
クリニックを差別化する方法の一つに、デザイン性を高めることがあげられます。病院らしい病院も良いですが、おしゃれな外観やスタイリッシュな外観にすることで目を引くことができます。家の近くにデザイン性の高いクリニックが建設されたら気になってしまう人も多いはずです。デザインに興味があるお医者さんは、開業する際にデザイン性の高い外観や内装にしてみるのも良いかもしれません。
◼ まとめ
クリニックには戸建てとビルのテナント、医療モールの3つの形態があり、それぞれに特徴が異なることをご紹介しました。郊外には戸建てのクリニックが多く、ショッピングモールの中に医療エリアが設けられていることもあります。都市部ではビルのテナントが多くたくさんの選択肢から選ぶことができます。
開業する際は準備期間に余裕を持つことが大切であり、立地選びや経営計画、スタッフの採用など注意するべきポイントがたくさんあります。患者様を集めるためには他のクリニックとの差別化を図ることが重要で、利便性の良い場所を選ぶことや間口を広くすること、ホームページを充実させること、デザインにこだわることなどをその方法としてご紹介しました。注意点や差別化の方法など、クリニックを開業する際の参考にしてみてください。