医院開業のメリットとデメリットとは?開業の手順やトラブルも
病院よりも小さく個人経営の医療施設のことを「医院」といいます。一般的にはどちらも「病院」と呼ばれることが多いですが、実際には定義や役割が異なります。病院よりも地域位に密着している「医院」を開業したいと思っているお医者さんもいることでしょう。
医院を開業しようと思った場合に知っておきたいメリットやデメリット、開業の手順をご紹介します。また開業後に考えられるトラブルについても知っておきましょう。
◼ 医院開業のメリットとデメリット
漠然と「将来、医院を開業したい」と思っているお医者は多いかもしれませんが、実際に開業した場合のメリットやデメリットは知っておきたいものです。
・メリット
医院を開業することの一番のメリットは、達成感ややりがいを得られるという点です。与えられた業務をこなすだけではなく、自分の医院で自分のやりたい医療を提供できるためです。医院開業のための準備に奔走して、いよいよオープンというときには達成感や感動で胸がいっぱいになることでしょう。
経営が上手くいくかどうかが確約されているわけではありませんが、自分の診療によって患者様の病気を治したり症状を良くしたりできることはモチベーションにもつながります。大きな病院ではできないような、患者様一人一人に寄り添った診療をできるのも個人経営の医院ならではです。
・デメリット
デメリットとしてあげられるのは、勤務医と比べると収入が不安定になる可能性がある点です。経営が上手くいくと収入アップにつながりますが、開業前にその確約はありません。開業して収入が得られるようになるまでには時間や費用がかかることも頭に入れておく必要があります。安定した収入が得られている状態から、リスクのある開業にシフトチェンジすることになるため、家族がいる場合は特にデメリットになり得るポイントかもしれません。
また自分の医院を持つと、医者でありながら経営者でもあります。看護師や医療事務といったスタッフを雇っているため、経営を成功させなければならないというプレッシャーを感じることもあるかもしれません。
◼ 医院開業の手順
医院の開業が決まるとやるべきことがたくさんあります。開業を希望する時期から逆算して一年以上は準備期間が必要なので、一年半くらい前には手順ややるべきことを頭に入れておくとスムーズに進むことでしょう。
・開業の動機
何かを始めるときには必ず動機があるはずです。医院を開業する場合にも、なぜ開業したいのか、なぜこの地域で医療を提供したいのか、といった動機を掘り下げていくことが一番初めにやるべき手順になります。
「これまでの経験を生かしたい」、「地域への貢献として医療を提供したい」、「大きな病院ではできないような患者様に寄り添った治療を行いたい」など、人それぞれだと思います。また自分では意識していなくても、動機を掘り下げることで明らかになる夢や願望が見つかるかもしれません。
具体的には診療方針としてどのようなことを掲げるのかを考えていくと、動機が見えてくるかもしれません。内科や外科、整形外科、耳鼻科、眼科といった分野はもちろん、地域の患者様を診たいのか、検査を中心にやっていきたいのか、といった方針も決める必要があります。
・場所選び
医院を開業するにあたって、場所選びは非常に重要な工程です。来院する患者様の数に直結することでもあり、一度決めると変更がきかない工程でもあるためです。まずはざっくりとしたエリアの候補を考えます。例えば地域医療に貢献したいという思いがある場合、開業しようと思っている科目の医院が少ない地域を選ぶのが効果的です。
一戸建ての医院を建設するのか、ビルのテナントや医療モールに入るのか、といった形態も決めなければなりません。都心部ではビルや医療モールに入っている医院がほとんどですが、田舎では駐車場付きの一戸建てである医院も多くあります。どの地域に開業するかによって他の医院がどちらであるかを参考にしてみると良いかもしれません。
・資金計画
医院を開業するために必要な資金をどのように集めるのかという計画も立てなければなりません。金融機関からの融資を受けるのが一般的ですが、メガバンクや地方銀行、政府系の金融機関などさまざまな種類があります。
融資を受けるためには、開業時の支出の内訳や初年度の収支計画などを記した「事業計画書」を作成する必要があります。事業計画書は融資を受けるために必要なだけではなく、経営を進めていく上での指針にもなるという意味でも重要な工程です。
また経営していく上で税理士を選定することも忘れてはなりません。帳簿の記帳や税務申告、データ分析などの専門的なアドバイスをもらえる税理士を選ぶようにしましょう。
・医療機器の選定
医院を経営していくにあたって、どのような医療機器を採用するかを考える必要があります。診療科目によって使用する機器は異なりますが、エコーや内視鏡、聴診器など、想定する患者様の数や層に合わせて選びましょう。機能面だけではなく予算とのバランスも大切です。
またどの科目の医院であっても電子カルテは必要です。これまでカルテは紙媒体で保存されていましたが、検索に手間がかかることや災害時のリスクから電子カルテの使用が一般的になっています。使い勝手や予算、アフターサービスといったポイントを見比べながら選んでいくと良いでしょう。
・内装工事
医院を開業する場所や物件が決まったら、内装工事の依頼を行います。好みのデザインや色合いを選ぶことはできますが、想定する患者様や診療科目に寄り添った内装を選ぶと良いでしょう。診療科目を問わず、バリアフリー対応の設計にするのが一般的になっていることを頭に入れておく必要があります。
・スタッフの採用
優しい、温かい、親しみやすい、テキパキ、丁寧、など人材に求めるポイントはさまざまです。医院の雰囲気はスタッフによってもがらりと変わるため、重要な工程だといえます。開業していない医院のスタッフ募集はハローワークを使用することができません。そのためインターネット上の人材募集サイトや広告、求人誌などでスタッフを集めることになるでしょう。
どの診療科目であっても看護師や医療事務など最低限のスタッフは必要です。経験者を採用することができれば安心ですが、そうではない場合もあります。開業前にスタッフへの指導をする必要もあるため、できるだけ早めにスタッフを集められるのが理想です。
・開業に関する手続き
開業するためには、さまざまな行政機関へ届出をする必要があります。例えば診療所解説届を保健所に、保険医療機関指定申請を厚生局に、など。それぞれの届出が難しいというわけではありませんが、手続きが間に合わないせいで開業が遅れてしまうことのないよう事前に相談しながら進めていくことをおすすめします。
また注意しておきたいポイントとして、ビルや医療モールに医院を開業しようと思っている場合、賃貸契約を締結する前に保健所に行くことがあげられます。不動産会社が紹介してくれた物件であっても、保健所に届出をすると承認されない場合もあるためです。契約してから承認されないという事態になると余分に時間もお金もかかってしまうため注意しておきましょう
◼ 医院開業後に考えられるトラブル
たくさんの手順を踏んでこぎ着けた開業は、ゴールではなくスタートです。開業してからは経営を続けていかなければなりません。そこで開業前に知っておきたい、経営していく上で考えられるトラブルについてご紹介します。
・患者様の維持
資金計画の段階で事業計画書を作成しますが、開業してすぐにそう上手くいくわけではありません。患者様の数を集めるために1~2年程度は必要であり、3年を目安に患者様の推移をみていくと良いでしょう。一度増えた患者様を維持するのも大変です。近くに同じ診療科目の医院が新しくできたり、何かしらの原因で人気が落ちてしまうといったことも考えられます。
患者様の数が思うように増えなかったり、減ってしまったりすると不安に感じられるかもしれません。患者様の数を維持するためには、新しい患者様を増やすことはもちろん、一度来院した患者様が再度来院してくれることも大切です。何度も来院してくれる患者様との信頼関係を築くことで、口コミが増えて新しい患者様の獲得にもつながります。
・スタッフ同士の人間関係
人材募集の際にもご紹介した通り、スタッフによって医院の雰囲気は大きく変わります。スタッフ同士の人間関係が上手くいっていなかったり、トラブルが起こっていたりすると雰囲気が悪くなってしまいます。すぐに解決するような小さなトラブルであればどの職場でもあるかもしれませんが、離職につながるようなトラブルは避けたいものです。
医院内の人間関係がどのようになっているのかに気を配り、間に入った方が良さそうであれば中間の立場で話を聞くといった対応をする必要があります。
・システム面
経営していく上で一度はぶつかるのがシステム面の問題です。患者様が増えて人気が出ると嬉しいものですが、待ち時間が長いといったクレームにつながる場合もあります。待ち時間をゼロにするのは難しいですが、待合室で快適に過ごせるようにしたり予約できるシステムを導入したりと対策はあります。
患者側で医院に行った際に、、待ち時間を伝えられずに一時間待たされたり、待合室に人がたくさんいるのに受付の人に暇な様子が見受けられたりといったことがあると疑問に思うこともありますよね。「〇〇分ほどでご案内致しますので、空いている席でお待ちください」とだいたいでも良いので待ち時間を伝えたり、スタッフの対応次第で患者様のストレスを緩和させることもできます。
◼ まとめ
医院を開業すると達成感ややりがいを得られるというメリットがある一方、収入が不安定になる可能性があるというデメリットもあります。開業までには時間や費用がかかるだけではなく、勤務医として働きながらたくさんの準備をしなければなりません。
場所選びや資金計画、スタッフの採用などを経て、ようやく開業にこぎ着けてからも、さまざまなトラブルが起こり得ます。事前に想定できる対策は想定した上で、その都度状況に合わせて対応していくようにしましょう。
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