歯科医師にとって、理想的な歯の治療は、その場しのぎのつじつま合わせ的な治療ではなく、生涯、できるだけ多くの自分の歯で、食べられるようにすることではないでしょうか?
ところが、日本の健康保険の制度において、この理想は貫かれていません。その場しのぎの、つじつま合わせ的な治療しか、できない仕組みになっています。なぜなら、すべての国民が、平等に、最低限の治療を受けられることが目的だからです。奥歯がなくなれば、食事をきちんと食べられないので、栄養が偏り、健康に悪影響を及ぼす恐れがあります。その為、失った歯をつけて、食事ができるようになれば、それで完了なのです。歯を長く持たせるということは、目的に含まれていません。
例えば、抜歯しなくてはならなくなった歯を、自費診療でインプラントにすれば、インプラントを埋め込んだ両側の歯は、インプラントによって負担をかけられることがありません。その為、健康な歯まで犠牲にしないで済むのです。しかし、保険でできる治療の場合は、ブリッジという治療法が適用されます。ブリッジは、両側の歯に負担をかけるので、いずれ両側の歯も、ブリッジ治療の犠牲になり、失ってしまう可能性があるのです。
歯科医師は、そのことを患者に説明しますが、患者側の歯に対する意識が低い場合や、経済的に無理な場合には、いずれ両側の歯もダメになるとわかっていても、ブリッジ治療をしなくてはなりません。この治療のせいで、いずれほかの歯も失ってしまうと、わかっていながら、せざるを得ない状態は、医師の倫理を損なわれるようで、辛いのではないでしょうか?さらに、保険治療の場合、歯科医師が得る収入は、自費診療とはけた違いに低いという現実もあります。
それを考えると、せっかく開業するのならば、自分が持っている歯科医療に対する知識と、技術が存分に活かせるクリニックにするべきです。そして、理想の治療を推し進められる環境を、作っていかなくてはなりません。その為には、自費診療の患者様にターゲットを絞るイメージ作りが大切です。
自費診療にターゲットを絞るイメージ作り
歯科医の仕事の一つとして、患者への啓蒙があります。自分の歯を守り、良い状態を維持するためには、質の高い治療や予防が必要であるとことを、納得してもらうためです。自費診療、または予防歯科の治療を受けようと考える人は、歯科医療に対して、ある程度の知識があり、自分の歯に対して、高い意識を持っています。したがって、医師の言葉にも耳を傾け、納得して自費診療を受けます。
しかし、世の中にはそうではない人たちもいます。今、歯が痛いから、これだけなんとかしてくれれば、それで十分と考える人、毎月健康保険料を支払っているのだから、保険の治療以外は受けたくないという人です。
もし、今まで勤めていたクリニックでは、理想とは違う、というジレンマを持ちつつ働いていたとしても、開業を機に、理想的な治療ができる歯科クリニックにしませんか?歯が痛くなったから来るのではなく、常に自分の歯を良いコンデイションに保ちたい、治療をする場合には、費用が掛かっても、最高の治療を受けたいという患者様が、求める歯科医院です。
その為には、上質な雰囲気を持った歯科医院を作らなくってはなりません。上質な雰囲気を持った歯科医院とは、定期健診にはまだ間があるし、虫歯もないのに、行きたくなるような歯科医院です。そのような歯科医院にするためには、自費診療を求める人が、歯科医院に求めるていることを、把握しておく必要があります。
自費診療を選ぶ人が歯科医院に求めていること
一番は、歯科医の技術力と知識の深さです。しかし、それは初めからわかりません。治療を受けてみて、初めて、良い先生に当たったと感じたり、外れだったとがっかりしたりするのです。それでは何を基準に、歯科クリニックを選ぶのでしょうか?歯に対する高い意識を持っている人が、技術と知識以外に、歯科クリニックに求めるものは、清潔感、癒し、洗練された雰囲気です。
ネットで調べて予約し、入口まで行ってみたけれど、写真と違って清潔感のない外観だったので、入らずにキャンセルしてしまったというようなことにならないよう、外観の清潔感は、非常に重要なポイントです。特に、審美歯科や、予防歯科が目的の場合、クリニックに通うことが、ステータスになる、素敵な雰囲気の歯科医院に行くと、満足感を覚えるという人もいるからです。
待合室は、清潔感に加えて、待ち時間を心地よく過ごせる雰囲気が必要です。自費治療を中心にするのであれば、洗練された高級感のある待合室が理想的です。待合室や診療室は、予約制であっても、治療の手順上、待たされる時間が多い場所です。待たされている時間は、暇です。暇なので、細かな部分まで、視界に入ってきます。どこが視界に入っても、遜色のない待合室、診療室にしておくことが大切です。
受付とカウンセリング室は、クリニックの印象を決める場所です。受付は、明るく、感じが良い雰囲気、カウンセリング室は、待合室や、診療室からの話し声や、物音が聞こえず、プライバシーが守られていると感じられる空間にする必要があります。
特に、診療室は、細かな器具が多いので、毎日、きれいに掃除をしていても、ほこりが溜まったりすることがあります。内装に使う建材には、ほこりを寄せ付けない素材を使う、細かな器具を整頓しやすい内装にするなどの工夫が求められます。待ち時間に、どこが視界に入っても、癒される、気持ちが良いという内装は、患者様に好感を与えます。
歯科医師が本当にしたい理想の治療ができる環境作り
日本は、他の先進国に比べて、歯科医療が非常に遅れています。その大きな原因の一つは、保険での歯科治療です。そして、それは、取りも直さず、多くの人が、歯科医療に対して、正しい知識を持ち合わせていないということでもあります。なぜ、自費治療が、生涯にわたって、自分の歯を守るために、有効な治療方法なのかということを、きちんと説明することだけでは足りません。
自分が学んできた歯科医療への造詣と、技術を活かせる環境を作るためには、自費診療の患者様が、来院するクリニックにすることが、非常に重要です。総入れ歯をインプラントにする、というような治療をする人は、保険の入れ歯を入れる人に比べて、経済に余裕がある人です。審美やホワイトニング、大人の歯列矯正をする人は、自分の美しさを維持するために、努力している人です。そのような人たちが来院して、居心地が良い、自尊心がくすぐられるというようなクリニックにすれば、思う存分に理想の歯科治療ができます。
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居心地の良い診察室、待合室にするためには、設計力、デザイン力が物を言います。周辺の環境に合わせた採光の方法、通りとの位置関係に合わせた外観、患者様にとっても、スタッフにとってもストレスのない動線など、あらゆる要素を満たすのが、設計力と、デザイン力です。
岡部克哉建築設計事務所は、自分の理想の治療ができるクリニック、スタッフが気持ちよく働けるクリニック、患者様全員が満足できるクリニックを、必ず実現します。クリニック開業は、どのような器を作るかということが、成功のポイントの一つです。素晴らしいクリニックを完成させるお手伝いをさせてください。
建物やクリニックをつくるということは人生最大のイベントのひとつです。決して不注意なミスは許されません。我々は常に、もし自分がこのクリニックをつくる施主だとしたらどうするか、常に施主様の立場を考えながら、設計や監理にあたっています。そうすることにより、よきパートナーとしてお施主様と二人三脚でクリニックをつくっていくことが出来ると思っています。
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