医院開業時の設計士とのやり取りや大事なポイントについて
新築の医院を開業する際は設計士にデザインや諸々の作業を委託します。設計士と言っても建物の設計をするだけでなく、見積りや各種手続きも行うので施主様にとってかなり重要な存在です。特に医院の設計は専門的な知識が求められるので医院設計を専門で行っている設計士に依頼することがポイントとなります。そこで今回は新築の医院開業時の設計士の役割や事前に知っておくべきことについてご紹介します。
設計士と連携して新築の医院を建てる
勤務医が独立して開業医として医院を開く際の方法は、テナントを借りて開業する方法と新たな土地に新築の医院を建てる方法の2通りがあります。どちらの方法が好ましいかは立地条件にによって変わります。
立地条件は都市部か郊外かによって大きく変わります。都市部は人通りが多いので多くの患者様を集められる可能性がありますが、土地の値段が高いので新築ではなくテナントの方が効率よくなります。逆に郊外は人通りが少ない反面土地代は安いので新築の広くてフレッシュな医院を建てられます。
新築の医院を開業する場合は土地を探したり建物を建築するといった作業が発生するので設計士の存在が必要不可欠です。特に医院の設計は特定の知識や経験が求められるので、医院の設計を専門にした設計士との連携が必要になります。
設計士は建物を設計するだけでなく見積りや手続き申請なども行うので、土地探しから引き渡しに至るまで長い期間に渡って施主様とのやり取りが続きます。そのため設計士は新築の医院を開業する上で非常に重要な存在です。
これから医院の開業をしようと考えている方は設計士の役割ややり取りをする上で重要なポイントを抑えておきましょう。
医院専門の設計士がやること
新築の医院が完成するまで設計士がやることはたくさんあります。
建物の設計
まずは設計士の本業でもある建物の設計です。これは医院を建てる土地選びから開始して、施主様の希望に沿った医院を設計します。医院の設計を考慮するにあたって集患の見込みや充実した設備と医院を利用する人々にとっての居心地の良さなどを考慮する必要があります。
見積り・申請・手続き
医院の建築に必要な費用の見積りを出すことも設計士の仕事です。当然費用が高いほうが質の高い医院を建てられますが、施主様の費用には限度があります。その限度の中で限りなく施主様の希望に沿った医院を目指さなければなりません。また契約の際に必要な申請や行政手続きも行います。
施工会社の紹介・工事中の管理
医院の設計が決まったら施工会社を探して施主様に紹介します。施工会社に所属している設計士に依頼した場合はそこの会社に依頼することになります。基本的には数ある施工会社の中から予算の範囲内で質の高い工事を行ってくれる業者を探します。
工事が行われている最中も設計士は現場を訪れて工事の内容をチェック・管理します。そして工事が完了するまで管理し続けます。
医院専門の設計士とのやり取りの流れ
弊社・岡部克哉建築設計事務所に依頼した場合の施主様と設計士とのやり取りの流れを紹介します。詳細はリンク先のページをご参照ください。
http://kooclinic.jp/work-flow/
問い合わせ→コンサルティング→基本調査→プレゼンテーション→設計監理業務委託契約
施主様から依頼のご連絡をいただいたら打ち合わせをして開業する医院の要望を伺います。その後希望に沿った医院を開業できそうな土地を調査して、図面や模型などを用いて設計内容を施主様にプレゼンテーションします。ここでの図面は初期段階なのでこの段階で図面が完成するわけではありません。内容にご納得いただけたら委託契約を交わします。
地盤調査と測量→基本設計→概算見積り→実施設計→本見積り→行政手続き・申請→工事契約
委託契約を交わしたら本格的な設計と見積りを行います。地盤調査は開業する土地の地盤が建築に耐えられるだけの耐久性があるかどうかをチェックする作業で、地盤が緩んでいる場合は補強工事を行います。
その後医院の設計と導入する設備や施工会社の選定を経て最終的な見積りを算出します。その後、役所で行う手続き・申請を行って工事契約を交わします。
地鎮祭→工事監理→上棟→竣工→引渡し前の各種検査→取り扱い説明→引渡し
工事契約を交わしたら地鎮祭を行い工事が始まります。工事中に施主様が行うことは特にありませんが、設計士は工事中も現場に行き逐一管理します。施工会社と連絡を取り予定通りに工事が進んでいるかどうかを確認します。
医院が完成したら設計士が内容を確認し、問題なければ施主様にも現場に呼んで内容を見てもらいます。引渡し前に現地で設備や器具の取り扱い方法を説明をして、引受書に記名捺印して鍵を渡したら引渡し完了です。
医院を設計するうえで大事なポイント
医院の開業を考えている施主様が設計士に依頼する前に覚えておくべき大事なポイントがいくつかあります。
医院の基本理念と方針を事前に決めておく
医院の開業は設計士と連携して進めていくものですが、医院の基本理念と方針は医師の方が責任をもってしっかり決める必要があります。医院の開業するためには「なぜ開業するのか?」「どのような医院を目指したいのか?」などの考えが必要になります。これらは収入アップや社会貢献など様々な理由が考えられます。ただしどんな理由にせよ医院を経営する上で基本理念と方針はその医院の肝となります。
設計士は医院の理念や方針をもとに開業をサポートするので、仕事を依頼する前に施主様自身でしっかりと考えを固めておきましょう。
設計士は施主様のパートナー
医院を開業する場合、上記で説明した通り設計士との関係は最初の打ち合わせから引き渡しまでずっと続きます。そのため本当に頼れる設計士を選ぶ必要がありますし、連絡を密にとる必要もあります。
綿密な打ち合わせが大事
医院を開業するためには設計士と何度も打ち合わせをすることになります。設計士に依頼した最初の段階から開業までのスケジュール、立地条件、費用の見積り、クリニックの構造、その他細かい意見交換など打ち合わせしなければならないことはたくさんあります。
そして打ち合わせの回数が多ければ多いほど時間も取られるということになります。そのため開業に必要なのは費用だけでなくそれ相応の時間も必要であるということを覚えておきましょう。
医院開業の実績は必須
建築業界の設計士はたくさんいますが、それぞれが得意とするカテゴリーが違います。そのため設計士も資格を持っていれば誰でもいいというわけではなく、その分野において経験豊富な専門家を選ぶように心がけましょう。
特に医院の設計は独特の考え方が必要です。住宅や事務所の建築とは内容が全然違ってきます。集患の見込める立地条件、診療科目ごとに必要な設備、医師・医療スタッフ・患者様の動きを考慮した導線など医院を建築するためにはたくさんの知識が必要になります。
頼れる設計士かどうかを判別する際はその設計士の実績が重視されます。過去の建築事例を参考にしてデザインや内容が充実している実績のある設計士を選びましょう。
更に言うとその設計士が得意とする診療科目にもこだわります。施主様が標榜する診療科目での実績がある設計士なら頼れる可能性が高まります。逆に外科を標榜しているのに歯科医院の建築実績がある方や、介護施設の建築実績がある方などは外科医院は得意ではない可能性があるので避けるべきでしょう。
まとめ
今回ご紹介した内容は以下の通りです。
・新築の医院を開業するためには設計士の存在が必要不可欠
・設計士は建物の設計だけでなく土地選びや見積りも行い、引き渡しまで関係が続く
・より良い医院を開業するためには医院の建築実績が豊富な設計士を探す