多くの医師が経験した歯科医院開業時に苦労する3つのこと
開業準備をしていると、思うようにならないこと、うまくいかないことは山ほど出て来ます。できるものなら、スムーズに着実に開業に向けて進んでいきたいですよね。
開業時にどのような苦労をするのかを知っておけば、対策が打てますし無用な苦労をしなくても済みます。今回は、歯科医師の多くが開業時に経験した苦労と、乗り越えるための打開策をご紹介します。このコラムが、これからの歯科医院開業の参考になれば幸いです。
コラムのポイント
・歯科医師の多くが開業時に苦労することは、『資金面』『物件探し』『人材雇用』の3つです。
・『資金面』は融資の検討や自己資金をしっかりと準備しておくこと、『物件探し』は高精度なマーケティングや建物の魅力を活かす設計事務所探し、『人材雇用』は開業準備とともに育成準備も進めることが大切です。
・競争率の高い歯科医業界で生き残っていくためにも、二人三脚で歯科医院開業できる建築設計事務所を選びましょう。
歯科医院開業後の存続率
毎年多くの歯科医師が開業していますが、反面休診や廃業も数多くあります。
厚生労働省発表が発表した、2017年の医療施設調査・病院報告の概況によると、全国の医療施設総数180,909 施設のうち、休止・1 年以上休診の施設を除いた活動中の施設は178,492 施設となっています。(2017年10月1日現在)これは2016年に比べ419施設の減少で、歯科診療所は68,609施設で331施設減少しています。そのうち病院は30施設減少、一般診療所は101,471施設で58施設減少です。
様々な事情があるでしょうが、存続し続けるような歯科医院を開業するためには、経営手腕だけでなく開業時の入念な準備も大切です。多くの医師がつまずくポイントをしっかりと把握しておき、先を見据えた準備や土台作りが大切です。
開業時に苦労したこと
開業時に苦労したこととして、『資金面』『物件探し』『人材雇用』の3つが挙げられます。それぞれ見てみましょう。
⒈ 資金面
やはり最も苦労するのは、資金面です。歯科医院を開業する場合、物件や場所など条件によって異なりますが5,000万円はかかると言われています。
すべて手持ちの資金でフォローできればいいですが、そうはいかない場合は融資に頼ることになります。しかし、融資を受けるにも社会的信頼度が高く返済が見込めるなど、数多くの条件があります。
開業時にまとまった資金が必要な場合、融資は、日本政策金融公庫で融資を受けることができます。日本政策金融公庫とは、100%国が出資する金融機関のことです。歯科医院開業時に、機材の購入や建築などで資金が必要となった時に利用できます。ただこの場合、支店決裁権という考え方により、1,000万円までしか創業時には基本的には融資を受けることができません。
他にも、中小企業経営力強化資金というものがあります。これは創業時に無担保・無保証人、低金利で融資を受けられる制度です。国の政策によって金利は頻繁に変わりますが、個人で公庫から借入をする場合と比較すると、金利が低いのが特徴です。
資金面のやりくりに関しては、大きな額が動くため慎重に判断しながら進める事が大切です。また、融資を受けるためにもある程度の自己資金を準備しておきましょう。お金を借りるための信頼度の証明としても有効です。
・開業前にしっかりと自己資金を集める
・銀行、国など資金調達先を複数検討しておく
・複数の融資制度に関する情報を集めておく
・一つに絞らず複数の金融機関と交渉を進める
これらを計画的に行っておくことで、開業時の苦労や負担は軽減できそうです。
⒉ 物件探し
歯科医院をどこに開業するか、そんなデザインで建築するかによって、その後の経営状況を大きく左右します。開院前は、人口ピラミッドや年代別構成比、過去10年間の人口の増減、昼夜間人口比率の調査、一人暮らしや住宅所有関係別世帯比率の調査、業種業態や就学の割合調査、今後の地域の発展性などの調査を行う必要があります。そこで出てきたデータを元に、開院するかどうかを検討していきます。これらの情報が不足し需要が望めない場所なのに開業してしまうと、安定的な集患に繋がりません。
物件探しは、マーケティング調査にかかっています。立地を考え、最適な場所に開業できるようにしましょう。
また、一から建てるにしろリノベーションするにしろ、どのような外観や内装の歯科医院を立てるかも苦労するポイントです。せっかくいい物件が見つかっても、歯科医院の魅力を最大限発揮する建物ができなければ意味がありません。
患者様に継続して通っていただくためにも、ここに通いたい、治療してもらいたい、安心して任せられそうだ、と思ってもらえるような建物かどうかは重要です。
物件そのものの統一感や外から見た時の雰囲気、一歩足を踏み入れた時のイメージの統一など細部まで気を配りましょう。統一感を出すためには、コンセプトに合っているか、ターゲット層が好む内装か、など歯科医院のコンセプトや方向性に沿っているかが重要です。
苦労して探し出した物件を最大限活かすために、どの建築設計事務所を選ぶかは重要です。競争率の高い歯科医業界で生き残っていくためにも、最初の準備を入念にしておきましょう。
⒊ 人材雇用
開業準備を進めていくのは医師本人ですが、開業後に歯科医院を安定的に経営していけるかどうかは、採用した人材にも大きく関わっています。スタッフの評判が悪くなれば、どれだけいい腕を持っていても患者様は離れて行ってしまいます。
人材不足と言われている昨今、優秀な人材はどこからでも声がかかるため、雇用するのは難しいというのが現状です。いい人材が揃っていたとしても、歯科医院のビジョンを理解し体現していくことやマニュアルの作成、育成などやるべきことはたくさんありますし、うまくいかなければせっかく集まった人も離れて行ってしまいます。
開業準備を進めている段階で、人材育成計画もしっかりと立てておきましょう。
・教育マニュアルの作成
・歯科医院のビジョンを明確化・明文化
・定期的な雇用計画と採用条件
などをあらかじめ固めておくことが大切です。
どのような人材を雇用するかは、開業後にお客様がついてくれるかどうかにも大きく関わってきます。時間がないから慌てて採用…ではなく、じっくりと人となりをみて、一緒に働き続けられそうかを検討した上で採用していきましょう。
事前準備が歯科医院経営の鍵を握る
歯科医院開業に向けて、やるべきことは山ほどあります。その中でも、力を注ぐ部分とそうでない部分は優先順位をつけながら判断していくことが大切です。土地探しから建築、人材雇用のアドバイスまでワンストップで行うことができる建築設計事務所に頼るなど、得意とする人に任せられることは任せてやるべき仕事に集中できるような環境を作っていくことが、開業準備における大きなポイントです。
開業時苦労したことも、いざ開業してしまえばいい思い出になります。そう思えるような準備を進めていきたいですね。
建物やクリニックをつくるということは人生最大のイベントのひとつです。決して不注意なミスは許されません。我々は常に、もし自分がこのクリニックをつくる施主だとしたらどうするか、常に施主様の立場を考えながら、設計や監理にあたっています。
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