設計事務所と考えるクリニック内装のポイント
クリニック開業に向けた準備を考えると、資金繰りに土地や物件探しなど、やることがたくさんあります。スムーズに開業するためには、クリニックの内装やデザイン、開業などの手順をよく知っている会社と進めた方が、開業医として注力すべきところに労力を注ぐことができます。
設計事務所といっても、マンションの設計、クリニックの設計、福祉施設の設計など得意とする部分はそれぞれです。今回は、クリニックの建築を得意とする設計事務所と考えるクリニック内装のポイント、クリニックの実例をご紹介します。
コラムのポイント
・クリニックは、医師と患者様にとって快適な空間であることが求められます。
医師にとっては理想とする内装がしっかりと具現化されている、土地柄やターゲット層に即した空間であるかが大切です。患者様にとっては、リラックスして治療を受けることができるか、医師のスキルはもちろんのこと細部までの施された空間なのかが大切です。
・クリニックの内装は、入り口や待合室、お手洗い、受付などその場その場によってこだわるポイントが異なります。
・建築実例も参考に、これからのクリニック建築に求める内装のイメージを膨らませましょう。
クリニック建築を得意とする設計事務所
建築設計事務所は、建築物の計画立案や設計、設計監理、工事監理等を業務としています。
昨今、個人経営のクリニックは増え続けています。どのように差別化をし、独自のスタイルを作り上げていくかが次世代まで生き残るポイントです。
最適な環境と空間づくり
クリニックは、医師と患者様にとって快適な空間であることが求められます。
医師にとっては設備としてこだわるところ、理想とする内装がしっかりと具現化されていることが求められるでしょう。また、土地柄やターゲット層に即した空間であるかも大切です。
患者様にとっては、リラックスして治療を受けることができるか、医師のスキルはもちろんのこと細部までの施された空間なのかが大切です。
『患者様=顧客』という視点に立った時、徹底した客観的視点で想像力を働かせて作られていることが、クリニック繁栄の大きな支えとなります。ただデザイン性が高い、理想を存分に詰め込んでくれる、費用面での融通がきく、という部分だけでなく、クリニック建築の経験値が高くアイディアも豊富にある設計事務所が望ましいでしょう。
クリニック内装のポイント
クリニックの内装は、通常の商業施設とは異なります。施設それぞれの箇所の内装ポイントを見てみましょう。
クリニック入り口
戸建てのクリニックの場合、入り口には大きな庭や車寄せを設けると良いでしょう。オープンな雰囲気であれば、足を入れやすくなります。テナントの場合は、広く奥行きのあるデザインにすると良いでしょう。いずれにしろクリニックの顔となる部分なので、雰囲気よく印象に残りやすいデザインにするのがポイントです。
入り口奥の風除室は、下駄箱を設置するだけでなく、床のデザインやカーペットのデザインを変えて空間の変化を生み出すことができます。
待合室
待合室は、クリニックの中でも最も長い間患者様が過ごす場所かもしれません。診察や治療までの待ち時間を、ゆったりとリラックスして過ごせるように工夫をしましょう。広い空間が確保できるのであれば、ゆったりとしたソファやチェアをも受け、まるでホテルのロビーのような空間に仕上げてもいいですね。
診察室や治療室は、医療現場として清潔感のあるシンプルな空間が求められます。その分、待合室は色を多用したり家具にこだわったりと、個性を発揮していきましょう。
お手洗い
トイレは「心の鏡」といわれます。患者様は特に清潔感を期待されています。その期待に応えるだけでなく、質の高さを加えましょう。期待を超えた満足感を得られるお手洗いを提供する必要があります。
待合室から、スムーズに足を運ぶことができる場所に設置しましょう。クリニックによっては尿検査コーナーも必要なので、そのスペースを加味しておく必要があります。また、車椅子対応のスペースを確保するだけで利用者の満足度はぐっと上がります。
受付
患者様を笑顔で迎え入れて、待合室全体を見回すことができ、かつ診察室との連携もしっかりと取れる場所が受付です。クリニック内全体と連携を取りやすいような場所に設置しましょう。また、電子カルテや文房具のような備品など、多くの物が集まる場所でもあります。常に整理整頓がなされるように、収納や動線の工夫をしましょう。
薬局
設置しないクリニックも多いかもしれませんが、必要であれば設計の段階でプランに組み込むかどうかを決めておきましょう。受付と連動させて設置すれば、患者様もスムーズに動くことができます。
診察室
待合室や受付、処置室などとの動線がしっかりと計算された、使い易くて気持ちの良い、理想の診察室に仕上げましょう。患者様だけでなく、医師、スタッフ皆に自然と笑顔が溢れる様な、気持ちの良い空間であることがポイントです。
同じ白い色でもザラザラした白、つるつるした白など、質感の違いにより受ける印象は大きく異なります。質感や色の違いをうまく使いこなし、のびやかで拡がりのある診察室にすると良いでしょう。
処置室・技工室・滅菌室・検査室
これらの部屋は、診察内容によって必要であれば設けています。収納量を確保するとともに、使用する機材に合わせて使い易い環境を整えましょう。どこにどの器械を設置するのかを、より具体的に想定することが重要です。
将来的な医療展開を見越して、建築段階から設置する場合もあります。
X線室
構造上閉鎖的になりがちなX線室ですが、仕上材の選定や照明計画により、閉塞感を軽減し、もてなしの心で患者さんを迎えられるよう配慮します。
多くの人が関わるため、綿密な打ち合わせをしながら施工していくことが大切です。
クリニックの実例
クリニックの内装ポイントを活かした実例をご紹介します。
五十嵐矯正歯科クリニック
詳しくはこちら▷▷ http://kooclinic.jp/works/8/
この建物は1Fが歯科医院、2Fが住居となっています。このような併用住宅で生活する場合、ON/OFFの切り替えが難しいと言われる事が多いため、この建物では利便性よりもON/OFFの切り替えを優先し、あえて建物内部で医院と住居の行き来できないようにしました。
また、住居では建物外部に医師のプライバシーが露出し過ぎないよう、テラスを中心に各居室を配置しています。このテラスに向けて、内部空間を開けるように設計しています。
経堂デンタルケアクリニック
詳しくはこちら▷▷ http://kooclinic.jp/works/28/
世田谷の私鉄の駅から数分の位置にある、雑居ビルの1階に入るテナントクリニックです。
半径30mを超える緩やかな孤を描く壁と、雁行する壁の組み合せが、デザインの大きな特徴となっています。大きな曲面の壁の内側は受付、医局、コンサルティングルームなどが入り、雁行する壁の内側は半個室の診察室となっています。
半個室の診察室は人の位置によって見え方が大きく変わります。
場所によっては個室のように、違う場所ではオープンな診察室のように、異なる雰囲気を感じられます。
クリニックの内装は関わる人の満足感に繋がる
岡部克哉建築設計事務所は、良い設計をして素敵な建物を作る事の効果を最大限高める事、これを突き詰めていきます。
素敵な建物が出来れば、それを所有する方の所有欲も満たされますし、それを使う人も、大切に建物を使おうとしたり、こんな素敵な建物で働いている自分にプライドを持てたりします。また、素敵な建物で治療を受けることで満足感を高めてくれる患者さんも現れます。
建物とそこで行われる診療などの行為がシンクロして、素敵な物事の始まりが沢山うまれる事を願っています。クリニック建築についてのご相談は、いつでもお問い合わせください。