歯科医院の開業について。上手に経営する方法を紹介
歯科医院を開業して個人で経営している人あるいはこれから開業しようとしている人はたくさんいます。歯科は数ある診療科目の中でも孤立した特徴があります。多くの方が開業する反面、経営に失敗して廃業してしまう方もいます。そうならないためにも歯科医院を上手に経営する方法を覚えておきましょう。
開業医として歯科医院を経営する方法
歯科医院を開業するためにはいくつかの手順を踏む必要があります。
6年間の教育と1年以上の研修
まず歯科医になるために医療系の大学または医療系の学部がある学校で教育を受ける必要があります。歯科の場合他の学部と違って歯学部などの歯科に特化した学部を専攻する必要があります。
学校で6年間に渡る教育を修了した後に指定の病院もしくは診療所で1年以上の研修を受けます。研修を終えるとやっと開業医になる条件が満たされます。
土地を探す
歯科医院を開業する場合、開業する場所を自分で見つけなければなりません。開業する場所はテナントの物件と新築を立てる土地の2通りがあります。歯科医院は他の科目と比較すると少ない間取りで済むので、場所の選択肢も広がります。
場所ごとの特徴は繁華街か郊外かで大きく分かれます。繁華街の場合家賃などの土地にかかる維持費が高くなりますが、アクセスが便利で多くの集患が見込めます。逆に郊外の土地は費用が安いもののアクセスは不便なので地元の住民だけが対象となります。
資金を用意する
歯科医院に限らずクリニックを開業するためには初期投資として多額の資金が必要になります。資金の用途は大きく分けて設備投資資金と運転資金の2通りに分かれます。
設備投資資金は新築物件の建設費、治療するための器具や治療台・レントゲン撮影などにかかる設備費、事務作業や広告に必要な備品費用などがあります。
建設費は新築の場合、坪単価に換算すると約100万円です。歯科医院の平均的な広さは約30坪なので概算で約3000万円の建設費がかかります。ビルのテナントを利用する場合は毎月家賃を払う形になりますが、当然新築より割安になります。医療機器は約1200万円、備品費用は約300万円ほどかかります。
ただしこれらの金額はあくまでも目安なので、内容によって大きく変化する可能性は十分あります。例えば建物の構造は木造建築よりも鉄筋コンクリート造の方が高くなります。(歯科医院は基本的に鉄筋コンクリート造です。)設備の種類や内装もおしゃれで便利な製品を導入することで高額になります。
運転資金はクリニックを経営するための資金です。クリニックは患者様からいただいた治療費を利用して経営します。しかし最初の頃は患者様の数が少なく、治療費だけで経営することは非常に厳しいです。そのため最初のうちは事前に準備した資金で経営することになります。目安となる金額はそれぞれのケースによって異なりますが、約1000万円の自己資金が必要と言われています。
しかし設備投資資金と運転資金を全て自力で準備するのはとても困難です。そのため開業時は金融機関からの融資を受けることが一般的とされています。
他の科目とは違う歯科医院の特徴
歯科医は大きい括りで見ると「医師」という扱いになりますが、開業するためには他の診療科目とは別の活動をする必要があります。
医師免許ではなく歯科医資格が必要
外科や内科などの診療科目を標榜する場合、必要なのは医師免許だけです。現実的にはそれ相応の知識と経験が無いと医師として務まりませんが、外科を専攻してきた医師が内科やその他の科目を標榜することはルール上可能です。しかし歯科医を志す場合は医師免許ではなく歯科医資格が必要となります。
歯科医資格を取得するためには歯科学部で6年間の教育を受けた後に、指定の病院・診療所で1年以上の臨床研修を受ける必要があります。そのため歯科医資格を取得して開業できるようになるまで最低でも7年間の期間を要します。
学校の学部を選ぶ時点で他の診療科目とは違うので、歯科だけ医療業界の中でも孤立した存在と言えます。
歯科医院を開業する上で知っておくべきこと
歯科医院の開業を目指す方は事前に歯科医院の現状と特徴を把握しておく必要があります。
競争率が高い
歯科医院を開業する人は昔に比べて増える一方です。だからといって患者様の数が増えているわけではありません。そのため現在の歯科業界は競争率が高く、患者様の取り合いが続いています。
実際に開業した歯科医院が増えるだけでなく、年間約1600件の歯科医院が廃業しているという現実もあります。特に開業しようとする地域の近くに別の歯科医院が既に存在していると、既存の患者様はそちらに通院していることが多いので集患が厳しくなります。
年収は変化する
歯科医が開業する目的の中に年収アップを狙う人はたくさんいます。実際に歯科医だけでなく医師全般において勤務医よりも開業医の方が年収が多いという特徴があります。
しかし開業医は常に一定の年収を稼げるわけではありません。特に開業当初は初期投資が多く、クリニック自体の知名度も低いため集患が厳しくなりがちです。経営が上手くいけば収入は徐々に増えますが、最初から高い年収を得ることは難しいでしょう。
歯科医院の開業で失敗しないために
開業を成功させるためには「多くの患者様に利用してもらうこと」と「働きやすい職場環境づくり」の2つが必要です。
集患を常に意識する
歯科医院を開業した人の中には経営が上手くいかず3年弱で潰れてしまうケースもあります。現在は昔に比べて開業した歯科医の件数は多いので、待っていても患者様はやって来てくれません。患者様を増やすためには自分から働きかける必要があります。
多くの患者様に来院してもらうためには
患者様に対して歯科医の魅力をアピールする方法の一つとして独自性を出すという方法があります。歯科には予防治療や美容目的など数多くの治療内容があります。
これを開業したエリアの地域性に合わせることで多くの集患が狙えるようになります。例えば繁華街の中で開業するなら地元の人だけでなく公共交通機関を利用して通院してくれる患者様も見込めるので美容目的の治療が考えられます。
逆に郊外の家族住まいが多い地域の場合、虫歯治療の子供がターゲットになります。その場合子供は歯科医院に通うことを怖がら内容に、キャラクターをモチーフにした内装や待合室で時間を潰すための絵本やぬいぐるみなども用意するべきでしょう。
優秀なスタッフの存在が必須
歯科医院を開業して自分一人だけで経営することは不可能です。営業中の医師は治療に専念することになるので医療スタッフを雇って一部の作業を委託する必要があります。医療スタッフに委託する作業は受付、事務、治療の助手などがあります。
優秀なスタッフに働き続けてもらうためには職場の働きやすい環境を作る必要があります。働きやすい職場には良好な人間関係や効率良い仕事が出来るシステムなどが求められます。 患者様への対応もスタッフが行うので、丁寧な対応を心がけることで集患にも大きく影響します。
まとめ
今回ご紹介した内容は以下の通りです。
・歯科は他の診療科目とは違う扱いなので孤立した存在と考えられる
・歯科医院の開業は年々増えており競争率も高いので開業前から集患を意識する必要がある
・歯科医院の開業を成功させるためには多くの患者様に利用してもらい、優秀な医療スタッフに働いてもらう必要がある