【クリニック開業】段取りよく進めるスケジュールと流れ
本業もまだ忙しいし、クリニックの開業準備はできればスムーズに進めたいもの。もし、あらかじめどんなことをするのか、何を準備しておいたらいいのかが把握できていれば…とてもスムーズに開業準備を進めることができます。
時間を効率的に使うために、段取り良く打ち合わせなどを進めていくために、知っておくと役にたつクリニック建築のスケジュールと流れをご紹介します。
コラムのポイント
・開業コンセプトの決定から開業場所の選定、開業資金の借入れ、医療機器の選定など、開業に向けてやるべきことはたくさんあります。
・患者様、医療スタッフ、医師が利用しやすい施設であるかどうか、という部分は特に重点を置いて計画を立てましょう。
・段取り良く準備を進めるためにも、クリニックの開業を意識し始めた段階で、できることは早めにしておきましょう。
クリニック開業の流れ
クリニックの開業については、以下の流れをたどるようになります。
⒈ 開業コンセプトの決定
まずはクリニック開業に向けてコンセプトを決定します。コンセプトとは、『全体を通した基本的な考え方』『はじめから終わりまでの一貫した考え方』のことです。開業準備やクリニックの経営を進めていく中では、数多くの判断をして決断を下す場面があります。このコンセプトに沿っているかどうかを考えることで、一貫した判断、決断を下すことができるのです。
その時にブレることなく一貫した答えを導き出すための指針となるのが、コンセプトです。
クリニックのコンセプトは、まずはしっかり理想を描いた上で、言葉に明確に落とし込んでみましょう。
⒉ 開業場所の選定
開業場所は、ある程度目星をつけて準備をされる方が多いかもしれません。しかし全ての希望が叶う物件や土地は、なかなか出会えるものではありません。少しでもいい開業場所が見つかるように、開業地は目で見て、周辺地域の様子や人の流れを確認しておきましょう。目指すクリニックにターゲット層、世帯層が合致しているかを把握することにも有効です。
また、開業場所が悪ければ集患がたちまち難しくなります。将来的にも大きな影響があるので、人口や世帯数、出生率などを参考にしながら探すようにしましょう。難しい場合、プロに相談して開業候補地を探すのも良いでしょう。
⒊ 開業資金の借入れ
開業するためには、資金が必要です。全額を自分で準備できる、という方はなかなかいらっしゃらないのではないでしょうか。多くの方は、金融機関に融資の申し込みをすることになります。融資を申し込む際は、事業計画の信憑性や安定した経営が見込めるか、毎月の返済能力があるか、人間的に信頼できるか、などが見られます。
融資額が高額になるほど保証人や担保提供を求められることがあるので、その段取りが必要です。また、開業後に不足資金を借りることは難しい場合が多いので、開業時に多めに借りておくと良いでしょう。
医療機器は開業と同時に購入しておくことで、返済計画を立てやすくなります。開業前だけでなく、開業後も運転資金が必要です。1,000〜1,500万円程度は確保しておけるよう、事前に準備をしておきましょう。
⒋ 設計・内装の決定
クリニックを建築、改装に向けて、間取りや内装の決定を行います。働きやすいスタッフの導線や医療機器の配置、診療中の声が漏れないような環境、プライバシーが守られたカルテの保存場所、患者様がリラックスできる待合室、といったように決めていきましょう。ウォーターサーバーやソファ、スリッパなど、必要になる備品もトータルコーディネートし早い段階で決めておくことで、より洗練されたクリニックになります。
クリニック建築の実績が多く、内情もよくわかっている設計事務所に依頼することで、スピーディーに満足度の高い建築を進めていくことができます。
⒌ 医療機器の選定
開業時の負担を抑えるためにリース契約をしたり、長期間使用するものは購入したりと、用途に合わせて選ぶようにしましょう。中古の医療機器も数多く出回っているので、新品にこだわらなくても良いものを手に入れることもできます。
リースをする場合でも、固定資産税や動産総合保険が含まれているため費用計上ができます。
⒍ 申請・届出
各行政に、クリニック開業に関する申請や届け出を行います。
・保健所
診療所開設届、診療用X線装置備付届、麻薬管理者・施用者免許申請書、診療所使用許可申請書(有床の場合)など
・厚生局
保険医療機関指定申請書
・社会保険事務所
健康保険・厚生年金保険新規適用届、新規適用事業所現況書、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届、健康保険被扶養者(異動)届
・公共職業安定所
雇用保険適用事業所設置届、雇用保険被保険者資格取得届
・税務署
個人事業開廃業等届出書、青色申告承認申請書、青色事業専従者給与に関する届出書、たな卸資産の評価方法の届出書、減価償却資産の償却方法の届出書など
・福祉事務所
生活保護法指定医療機関指定申請書
・地区医師会
母体保護法指定医師指定申請書
・労働基準監督署
労災保険指定医療機関指定申請書
これ以外にも届け出が必要な書類がある場合もあります。あらかじめ確認しておきましょう。
⒎ スタッフの採用
クリニックは医師だけでなく、受付や看護師など数多くの人によって成り立っています。そのため、頼りになりクリニックを支えてくれるスタッフを採用することが大切です。クリニックの規模や診療科目によって必要な人数や条件は異なります。
募集の際は、スタッフを募集する上で、高すぎず低すぎない給与額を設定しましょう。近隣クリニックと比べて見劣りしない金額を設定すると、良い人材が集まりやすくなります。面接の際は、応募者の職歴や志望動機、医療関連の実績などこちらが聞きたい質問内容を事前にまとめておくと良いでしょう。その上で、信頼できる医療スタッフになりうる人物かどうかを審査します。選ぶ視点が偏ることが懸念材料なのであれば、第三者の目も入れると良いでしょう。
最低でも開業の約2か月前から募集開始し、信頼出来るスタッフを集めておきましょう。
⒏ 広告戦略
医院・クリニックを新しく開業する際は、近隣住民に告知する必要があります。チラシやホームページをうまく活用し、患者様が集まるようにしましょう。
特にホームページは作っておくだけ…ではもったいないです。患者様が必要としている情報をしっかりと載せて、足を運びたくなる魅力的なホームページを作りましょう。
医院・クリニックの評判が上がれば口コミによる患者様の増加も見込めますが、最初の宣伝が肝心です。
クリニック開業のポイント
クリニックの開業の時に大切なのは、患者様、医療スタッフ、医師が利用しやすい施設であるかどうか、ということです。
患者様にとっては居心地の良い空間、医療スタッフにとっては働きやすい場所であることが望まれますし、医師にとっては経営者としてモチベーションを上げてくれるような存在であることが求められます。働く上では、余分なものを排除した方が良いのですが、あまりにも無機質で機械的な施設になってしまうと、患者様にとって居心地の悪い空間になってしまいます。
理想的な医院・クリニックの設計監理には医療スタッフが作業しやすい効率性と患者様にとって肌触りが良く落ち着いて通院出来る空間の両方を意識することが求められます。
開業に向けたスムーズな準備を
開業に向けてやるべきことはたくさんありますが、あらかじめ内容を把握して準備しておく場合とそうで無い場合では、その後のパフォーマンスが大きく変わります。
クリニックの開業を意識し始めた段階で、できる準備は早めにしておきましょう。
岡部克哉建築設計事務所は、良い設計をして素敵な建物を作る事の効果を最大限高める事、これを突き詰めていきたいと思っています。
素敵な建物が出来れば、それを所有する方の所有欲も満たされますし、
それを使う人も、大切に建物を使おうとしたり、こんな素敵な建物で働いている自分にプライドを持てたり。また、素敵な建物で治療を受けることで満足感を高めてくれる患者さんも現れます。
建物とそこで行われる診療などの行為がシンクロして、素敵な物事の始まりが沢山うまれる事を願っています。