【クリニック開業】勤務医から大きく変わる責任と収入
開業医としてクリニックを経営する。この大きく人生を変える決断に魅力を感じている方は多いのではないでしょうか。その中でも、自己の責任と収入という面に関しては、勤務医時代と比べて特に変化が大きく、足を踏み入れてみなければわからない世界です。
クリニック開業のメリットとともに、勤務医と開業医との収入の差、開業することによって生まれる責任についてまとめてみてみましょう。
コラムのポイント
・クリニックを開業することで、自分の裁量で仕事をしながら独自の診療スタイルの確立し、地域貢献もより感じながら医療に携わることができます。
・勤務医と開業医の収入の差は約1.7倍です。
・開業により、集患対策や従業員の労務管理など、今までなかった仕事も増えていきます。そこを超えていくクリニック運営をしていきましょう。
クリニックを開業する理由とメリット
クリニックの開業には、もちろん大きなメリットがあります。
開業によってすべての仕事をどうするかについて、自分で選択、判断し決断していかなければなりません。しかしこれは、仕事のバランスを自分の手で取ることができる、ということです。
派閥によって自分の意見が通らないこともありませんし、理不尽な要求をされる人間関係に頭を抱えることもありません。質の良い医療を追求しながら、自分の求める医療を貫くこともできます。仕事のバランスを自分で取ることができれば、プライベートの時間もしっかり確保しワークライフバランスも考えた生き方をすることができます。
すべての決断が自分次第、という部分ではもちろん難しいこともたくさんあるでしょう。しかし突き進んでいくことで自分の理想を実現にできるでしょう。
患者様の話を聞く時間をしっかり設けたい、診療できる人数は限られるが治療の時間を多めに確保したい、とにかく実力をつけるために数多くの人を診療したい…。開業することで、自身が求めるスタイルで患者様に向き合うことができます。
大人数が働く医院などでは大人数の患者様を診察できないため、一人ひとりにしっかりと向き合う診療は効率が悪くなってしまいます。一人ひとりを大切にする診療スタイルも、クリニックや医院の独自性として打ち出すのには十分で、何より院長の魅力にもなります。気兼ねなく働けることが、経営を続ける栄養剤となるでしょう。
地域中核病院や行政、保育所、介護施設、高齢者住宅などと連携することで、地域包括ケアシステムの一翼を担い、地域医療に貢献することができます。その中で築いたネットワークをもとに、自分の専門外の患者様を他のクリニックに紹介したり他のクリニックからも患者さんの紹介を受けたりする診診連携ができます。地域の開業医の繋がりが強くなることで、より地域への貢献を意識することができます。
また、長年診療を続けることで、患者様ご本人だけでなくそのご両親、お子様など家族代々続くかかりつけ医として、生活に寄り添った診療もすることができます。かかりつけ医として家族代々支えていくことは、結果として地域社会を守ることにつながります。地域と人とのつながりを常に感じながら、求める医療を実現することができるのです。
勤務医と開業医の収入の差
開業医になることで、収入が大きく変わります。
例えば医師の場合、病院勤務医の平均年収約1456万円に対して、開業医は約1.7倍の約2541万円でした。
医療経済実態調査|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/jittaityousa/20_houkoku.html
約2倍、年収に差があると考えると開業医に魅力を感じるかもしれません。しかしあくまで年収であり、勤務医にはない設備投資やクリニック建築の費用、医療機器のための積み立てが含まれています。また退職金や所得補償はありませんし、そもそも自己責任で医療に携わりクリニック経営を続けていくというリスクとともに歩む人生です。
リスクやストレスを抱えながらも、このリスクやストレスを超えるだけの収入をどうやって得ていくか、その仕組みをつくっていくかは開業人生を大きく左右するでしょう。
開業で生まれる責任
開業するということは、『経営者になる』ということです。安定した利益を上げ続けるためにも、診療技術の向上や医療機器の充実といった専門分野以外にも注力する必要があります。勤務医時代はやらなくてもよかったことでも、やらなければならないことがいくつか挙げられます。
地域住民の数から予想患者数や毎月の利益だけでなく、かかる経費などを試算します。また患者様一人当たりの予想利益の算出、1日何人を診療すればいいか、1ヶ月何人を診療すれば利益を上げるために目標達成できるか、を想定した上で開業地を決めていきます。周辺のクリニック情報もつかんだ上で、地域住民のニーズを把握し、どうやったら集患できるのかを考えましょう。
そして次に大切なのが広告宣伝です。新聞の折り込みチラシやポスティング、ホームページの開設などできることはいくらでもあります。口コミや確かな技術はもちろん大切ですし、そこに患者様がつくことももちろんあります。まだ見ぬ方に向けて発信を続けることが、必ず集患につながります。患者様を増やし、足を運んでもらい、利益を上げ続けることがクリニックの経営者としてのあるべき姿です。
最新の医療機器の導入や、技術を学ぶためのセミナー参加、交流会、災害などで建物が破損した後の対応…。開業医として自身のクリニックを持った場合、全てにおいて資金調達をしなければなりません。今までは病院が購入してくれていた、セミナー費用も払ってくれていた、というありがたさを痛感するかもしれません。
全てが自己責任ゆえ、そこにかかる必要な資金は自分でなんとかしていく必要があります。積み立て、投資、融資など必要な知識はある程度身につけ、プロの手も借りながら経営していきましょう。
スタッフが持つ能力を、より効果的に発揮し活用することを労務管理と言います。労務管理がうまくいかなければ、スタッフの力が発揮できないだけでなく、モチベーションの低下や人間関係の悪化などクリニックに悪影響を与えます。
クリニックを開業した場合、診療業務だけでなく労務管理も行う必要があります。労働者として勤務医を長く続けていた場合、労務管理といっても何をどうすればいいのかがわからないかもしれません。しかしこの視点を経営者の視点に切り替えることが労務管理のコツでもあります。
いかにモチベーションを高く持ち常に発揮してもらうか、能力を伸ばしてもらうか、質の良い医療サービスを提供してもらうかは、労務管理にかかっています。
開業に向けての覚悟
勤務医時代とは大きく異なる開業医の責任と収入。収入が増える喜びとともに、『経営者としての責任』と『医療に携わる者としての責任』が常に付きまといますが、そこを超えたところに見出せる物が、医師としての人生基盤を支えてくれるものなのかもしれません。
建物やクリニックをつくるということは人生最大のイベントのひとつです。
決して不注意なミスは許されません。
我々は常に、もし自分がこのクリニックをつくる施主だとしたらどうするか、常に施主様の立場を考えながら、設計や監理にあたっています。
スタッフや先生、患者様にとって良質なクリニック設計、リフォームは岡部克哉建築設計事務所にお任せください。