クリニックの開業に必要な手続きと届け出
クリニックの開業にあたって、必要な手続きは山ほどあります。どのような手続きがあるのか、いつまでにどこに届け出をしたらいいのか、いつ頃から準備をしたらいいのか、などを知っておけば、スムーズに開業準備を進めていくことができます。
コラムのポイント
・クリニック開業のためには、保健所への開設届提出・審査、厚生局から指定医療機関コード取得、税務署への届出、労働保険の手続き、社会保険事務所で社会保険、厚生年金保険の手続き、など多くの手続きが必要です。
・開業準備時は事前相談をしっかりと行い、締め切り日もきちんと確認しておきましょう。
・詳しい『クリニックの設計監理・開業』についてはこちらをごらんください。
クリニック開業に必要な手続き
クリニック開業のためには、開業用地の選定や事業計画の作成、資金調達など同時に進めていくことがたくさんあります。それとともに、必要な手続きや届け出もしておかなければなりません。
手続きをうっかり忘れていて大変なことになる前に、必要な手続きと届け出を確認しておきましょう。
個人でクリニックを開業する場合は、クリニック開業予定地を管轄する保健所に、診療所開設届を提出しましょう。
その際、開設より10日以内に開設届は提出するとともに、以下の書類を提出する必要があります。
・開設管理者の医師免許証の原本と写し
・開設管理者の履歴書
・クリニックの敷地平面図
・クリニック付近の案内図
・クリニックの構造概要及び平面図
・従事医師及び看護師等の免許証、履歴書
・賃貸の場合は賃貸契約書
保健所に開設届が受理されなければ、保険医療機関の指定申請を行うことができません。届け出の日程を間違得ると、場合によっては開院日を遅らせることになり、パンフレットや広告の刷り直しなど想像以上の出費と手間がかかってしまいます。
保険診療をする場合、クリニックで健康保険証を使えるようにするために保険医療機関として指定を受け、指定医療機関コードを取得する必要があります。取得をするためには、以下の必要書類を揃えた上で、クリニックを管轄する厚生局で保険医療機関指定申請を行います。
・保険所長に受理された開設届
・クリニックの敷地平面図
・クリニック付近の案内図
・開設管理者の医師免許証の原本と写し
・開設管理者の履歴書
保険医療機関指定申請書が受理されると、医療機関コード番号が入った保険医療機関指定通知書が後日郵送されてきます。保険医療機関の指定開始日は地域によって異なるので、開業予定地を管轄する厚生局であらかじめ確認しておきましょう。
また、保険医療機関として指定を受けていなければ自由診療扱いになり、保険診療は行うことができません。保険診療開始日から逆算し、書類提出の機嫌を確認しておきましょう。
クリニック開業時に税務署に提出する届け出は、法律で義務付けられているものと任意のものとがあります。提出期限と合わせて確認しておきましょう。
個人事業の開廃業等届出書
クリニック事業を開始した日から1か月以内に、納税地の所轄税務署長に提出します。
給与支払事務所等の開設届出書
クリニックを開設した日から1か月以内に、所在地の所轄税務署長に提出します。給与の支払事務を行う事務所等を開設したことを知らせる届け出です。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書
提出時期は特に定められていません。給与の支給人員が常時10人未満である場合は、原則としてこの届け出をすることで提出した月の翌月以後に支払う給与等から7月10日・1月10日の年2回にまとめて納付することができるようになります。
本来、源泉所得税は原則として、徴収した月の翌月10日が納期限となるため毎月納付業務が発生します。申請書を提出した月に給与や税理士などの報酬支払がある場合、源泉所得税の納期限は翌月10日になるため納付もれがないよう注意が必要です。
青色申告承認申請書
青色申告承認申請書の提出期限は、事業を開始した日から2か月以内です。納税地の所轄税務署長に対して所定の申請を行うことで、青色申告書による申告が認められます。青色申告には帳簿書類の備付けや保存、明細書の添付などが必要ですが、正確な記帳や計算に基づいた所得こそ正しい所得とすることで、適正で公平な課税に結びつくものとして推進されています。
青色申告承認申請書を提出することによって、以下のような特典があります。
・青色事業専従者給与の必要経費算入
・青色申告特別控除
・一括評価による貸倒引当金の必要経費算入
・各種特別税額控除及び減価償却の特例
・純損失の繰越控除
・純損失の繰り戻しによる還付
・たな卸資産の低価法による評価
青色事業専従者給与に関する届出書
青色申告承認申請書を提出した場合、事業に従事している親族に支払う正当な対価は、必要経費として計上できるようになっています。適用を受けるためには、事業を開始した日から2か月以内に、青色事業専従者の氏名、その職務の内容、給与の金額、その給与の支給期などを記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
所得税のたな卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書
事業主はいくつかの方法の中からたな卸資産の評価方法を選定し、書類提出の翌年3月15日(確定申告期限)までに所轄税務署長に選定の届出を行います。この届出を行わなかったり選定した評価方法で評価しなかったりした場合、最終仕入原価法に基づいて評価額が計算されることになります。
クリニックの場合、開業初年度から所得が高くなるだけでなく、医療機器の購入や金融機関への返済資金などの資金も多くなります。この場合、資金繰りの観点からみると定率法を選択することで開業当初の納税額を少なくすることができます。
労災保険と雇用保険の2つを合わせて労働保険といいます。労働保険の加入の手続きは、労働基準監督署と公共職業安定所との2つで行う必要があります。
労働基準監督署で労災保険の手続き
労災指定医療機関としての指定を受けるためには、クリニック開設許可証の写しと、診療所の施設等に関する概要書を労災保険指定医療機関指定申請書に添付して、クリニック所在地を管轄する労働基準監督署長を経由し、所轄都道府県労働局長に申請する必要があります。
また、以下の書類が必要です。
・労働保険関係成立届
・許認可証の写し
・労働保険概算・確定保険料申告書
・賃貸の場合は賃貸借契約書の写し
公共職業安定所で雇用保険の手続き
雇用保険の手続きには、以下の書類が必要です。
・雇用保険被保険者資格取得届
・雇用保険適用事業所設置届
・許認可証の写し
・賃貸の場合は賃貸借契約書の写し
・クリニック事業主の住民票
・労働基準監督署に提出した保険関係成立届の事業主控
・賃金台帳
・労働者名簿
・出勤簿またはタイムカード
・雇用契約書
健康保険及び厚生年金保険に加入する場合、クリニック所在地を管轄する社会保険事務所で手続きを行います。
また、以下の書類が必要です。
・健康保険・厚生年金保険新規適用届
・健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
・健康保険被扶養者届
・新規適用事業所現況書
・給与支払事務所等開設届
・労働者名簿
・出勤簿またはタイムカード
・賃金台帳
・被保険者及び被扶養者の年金手帳
開業準備時の注意点
開業準備の際は、スケジュールや書類に不備がないか慎重に確認をしましょう。
診療所開設届が受理されれば、医療法上はクリニックですが自由診療しか行えません。保険診療を行うために各種手続きを行うのですが、この時、受付の締切日に注意しましょう。保険医療機関としての指定は原則毎月一日付けですが、締切日自体は各県により異なります。直前に慌てないよう、スケジュールは確認しておきましょう。
診療所開設届を提出する際、いきなり提出してもすぐに受理されることはほとんどありません。院内のレイアウトやクリニックの名称などの指導が入るためです。
事前に何度も足を運び、開設届の書き方指導や添付書類の説明をしてもらいましょう。しっかりと事前準備を行うことで、内装工事のやり直しやパンフレットや広告が出来上がった後でクリニックの名称変更などを避けることができます。
必要な手続きと届け出は事前の把握を
クリニック開業にあたって、わからないことはたくさんあります。手続きや届け出などは、ご自身で調べることも大切ですが、専門家にも相談をして確実に準備を進めていきましょう。
クリニックの開業の流れは、医院・クリニックのコンセプトや内容をイメージして場所と予算を調達し、設計事務所にデザインと施工を依頼して各機関に申請・届出を行い、スタッフ募集と各メディアを利用して近隣地域へ開業を告知して開業、となります。
(株)岡部克哉建築設計事務所は、クリニック設計を中心に、不動産からインテリアコーディネイトとその管理までを行っています。クリニック建設についてのお問い合わせはいつでも承っておりますので、いつでもご相談ください。