クリニックの設計に必要な3つの視点とは?
クリニックの設計は、建物の施工に関する知識だけではなく、医師やスタッフ、患者様それぞれの視点を考えて行う必要があります。患者様にクリニックを選んでいただくためには、医療の質はもちろん、他の部分でも患者様に満足していただく必要があります。そこでクリニックの設計監理とは何か、クリニックの設計に必要な3つの視点についてご紹介します。
◼ クリニックの設計監理
クリニックの「設計監理」とは、「設計」と「監理」という2つの言葉から成り立っています。設計監理は建築士の資格を持っている人のみが行える業務であり、施工業者が図面通りに工事しているかどうか、手抜き工事していないかどうか、といったことを確認するのがその業務内容となります。お客様との打ち合わせからプランの設計、設計図の作成、見積もりの作成、工程の確認、引き渡しの立ち合いなどを行う設計事務所が設計監理を行うのが一般的です。
・設計
建物を建てる際には設計図が必要ですが、家の設計を考えて図面に書き込むことを「設計」といいます。お客様のご要望を聞いた上で、実現できるようなプランを考えます。予算に合った材料を選ぶことや、法律に則っているかを確認することも重要です。要望と予算、法律など、さまざまな条件に合う家の形を考えて図面に起こすことが設計となります。
・監理
「監理」は設計と比べて聞き慣れない言葉かもしれませんが、設計した内容通り現場での作業が進んでいるかのチェックを行うことです。施工会社に設計図を渡しただけでは、図面の内容が正しく伝わるかどうかは分かりません。図面を見ただけでは伝わらないような内容を施工業者に伝えること、お客様の代わりに現場での打ち合わせを行うこと、現場での工事内容をお客様に伝えることが「監理」の業務となります。
◼ クリニックの設計に必要な視点
クリニックの設計を行う際、ただ建物を設計するだけではなくクリニックの性質や目的を熟知した独自の視点を持っておく必要があります。建物としての美しさが過ごしやすさはもちろん、患者様に選んでいただけるようなクリニックにするためには、どのような視点が必要なのでしょうか。
・医師の視点
クリニックの開設は、お医者さんにとって理想とする医療の実現の場でもあります。3つの視点それぞれ大切にしなければなりませんが、お医者さんの視点は最も考慮すべきだといえます。医療に関する内容はもちろん、建物や雰囲気、スタッフとの関係性など、お医者さんがどのような思いを持っているのかをしっかり把握した上で設計を行います。
・医療スタッフの視点
クリニックでは医師を含め、看護師や助手、事務などのスタッフが働くことになります。クリニックの長ともいえるお医者さんはもちろん、働き始めたらなかなか本音を言いにくいであろう他の医療スタッフの視点も大切にしなければなりません。すべてのスタッフが働きやすい環境を事前に用意しておくことがクリニックの設計において重要だといえます。
・患者様の視点
クリニックで働くスタッフの視点と同様、忘れてはならないのが患者様の視点です。クリニックの経営を成功させられるかどうかは、患者様に選んでいただけるかどうかに掛かっています。患者様がクリニックに来られた際にどのように感じられるのか、患者様の視点も大切に設計を行う必要があります。
◼ 医師の視点
クリニックで患者様の診療を行う医師の視点を考慮すべきことは言うまでもありません。医療施設としての機能面を向上させ、お医者さん自身が働きやすいと感じるようなクリニックを設計するためには、どのような視点を考慮すべきなのでしょうか。
・理想の医療を実現できるクリニック
クリニックを開設するお医者さんは、勤務医として働きながら「いつか自分のクリニックを開きたい」と夢を抱いていた人が多いことでしょう。自分のクリニックを開設するからには、それぞれのお医者さんが理想とする医療を実現できるようなクリニックにしたいはず。「地域医療に貢献したい」「患者様に寄り添った診療を行いたい」「効率よく診療を行って、自分の時間も大切にしたい」「スタッフに気持ちよく働いてもらいたい」「スタイリッシュなクリニックを建てたい」など、さまざまな思いがあることでしょう。
・信頼へとつながるようなデザイン
クリニックは目的こそ違いますが、商業施設や飲食店と同じように患者様(お客様)に選んでいただけなければいけません。そのためには患者様に信頼してもらえるようなデザインである必要があります。通りすがりに初めてクリニックを見た方にとっては外観が重要であり、一度来院された方にとっては内装や過ごしやすさが重要です。患者様に良い印象を持ってもらえるようなデザインにすることが信頼へとつながります。
・投資や資産として
マイホームと同じように、戸建てのクリニックを建てる場合は自分の資産となります。クリニックの設計によって資産価値が変わってくること、費用対効果を高めることが大切です。またクリニックの雰囲気を良くすることや働きやすい環境を作ることは、スタッフのモチベーション向上にもつながります。結果として患者様への対応が行き届けば、クリニックとしての価値も上がることでしょう。
◼ 医療スタッフの視点
クリニックを設計する上でのお医者さんの視点をご紹介しましたが、共に働く仲間として他の医療スタッフの視点も忘れてはなりません。医療スタッフからの不満が多ければクリニックの雰囲気にも影響が出てくるため、設計の段階だけではなくお医者さんにとっても常に把握しておきたい視点です。
・働きやすい環境
クリニックには、お医者さんの他に看護師や助手、事務、受付などさまざまな職種のスタッフが存在します。それぞれのスタッフが働きやすいと感じる環境を作る必要があります。働きやすさはクリニックの雰囲気にもつながり、来院された患者様に伝わってしまうものです。これらはスタッフの離職や患者様の減少といった悪循環に陥る可能性もあるため注意が必要です。
・作業効率が上がるような動線
クリニックで実際に動き回るのはお医者さんではなく他のスタッフであることも多いかもしれません。作業効率を上げるためには、実はクリニックの設計が大きく関わってきます。設計によって作業効率が異なります。初めては小さなことに感じられてもだんだんストレスに感じてくることもあるため、注意が必要です。クリニック内を移動するときに必ず待合室を通らなければならない、収納が少ない、診療に集中しづらい、などクリニックならではのポイントがあります。そのためデザイン面はもちろん、クリニックの設計に慣れている業者に依頼することを検討することをおすすめします。
◼ 患者様の視点
クリニックで働く医師、医療スタッフの視点とは別に、患者様の視点もクリニックの設計では重要なポイントとなります。患者様に選んでいただけるかどうかは経営にもかかわってくるため、ターゲットとなる患者様に良い印象を持ってもらえるようなデザインにする必要があります。自分が患者様だったらどのようなクリニックに通いたいと思うか、家族を安心して通わせたいか、といったことも考えてみると良いでしょう。
・不安を取り除くようなデザイン
診療科目にもよりますが、クリニックには具合が悪かったり痛みがあったりする状態で来院されることが多いはず。そんな患者様の不安を取り除くことができるようなデザインにしたいものです。例えば色味だけでも、クリニックの外観や内装に刺激の強い色が使われているよりも、温かみのある落ち着いた色が使われていた方が安心しますよね。待合室のレイアウトや家具にも丸みのあるものを選ぶだけでも、角が目立つものよりは患者様の気持ちも落ち着くはずです。
・待ち時間の苦痛を減らす
クリニックに関する患者様の悩みの中でも、待ち時間が苦痛だという悩みが多く聞かれます。ただでさえ辛い状況にある患者様にとって、待ち時間を苦痛に感じやすいことは想像できますよね。診療を丁寧に行いたいお医者さんや人気のクリニックにとって、実際に待ち時間を減らすことは難しい場合もあります。しかし待合室の設計・デザインによって待ち時間の苦痛を減らすことができます。例えば他の患者様との距離、テレビの音量、キッズスペースの設置など。ウォーターサーバーや血圧計を用意するといった少しのおもてなし心があるだけでも、待ち時間の苦痛は軽減されるかもしれません。
◼ まとめ
クリニックの設計監理とは、お客様との打ち合わせからプランを設計し、施工業者が図面通りに工事しているかどうか、手抜き工事していないかどうか、といったことを確認する業務のことをいいます。設計事務所が設計監理を行うのが一般的ですが、クリニックの設計監理は実際にクリニックの設計監理の経験がある業者を選ぶことがおすすめです。なぜかというと、クリニックを設計する際には医師と医療スタッフ、患者様という3つの視点を考える必要があるためです。クリニックにおける動線や患者様が求めるポイントなどを熟知している業者に相談しながら設計を進めるようにしましょう。
岡部克哉建築設計事務所では、クリニックの設計監理や開業のお手伝いを行っています。これまでクリニックの設計監理を行ってきた経験を生かしながら、「自分が施主様であればどうだろうか」という視点を常に意識しながら設計監理に携わっています。患者様がクリニックに求める「良い医療」「良いサービス」「良い環境」という3つの要素のうち「良い環境」を作るお手伝いをさせていただいております。遠隔地のご依頼もお受けしておりますので、クリニックの開業をご検討の方はぜひお気軽にご相談ください。