病院と診療所の違いとは?それぞれの役割や機能を知ろう
患者様は具合が悪くなったり何かの症状が出たりしたとき、「病院に行く」と言われる人が多いはずです。しかし「〇〇内科」や「〇〇クリニック」といった施設は厳密には「病院」ではなく「診療所」という扱いになっています。病院と診療所の違いとそれぞれの役割や機能、病院の組織についてご紹介します。
◼ 病院と診療所の違いとは
一般的には医療施設のことを総称して「病院」と呼ばれることが多いですが、明確には病院と診療所は異なります。病院と診療所は、病床数によって違いが決められています。それぞれの違いについてご紹介します。
・病床数による違い
医療の安全性を確保するために、科学的根拠に基づいた医療を提供する場として、医療法で治療を行える施設を病院と診療所だけに限定しています。病院は高度な医療を提供役割があるため、医師や看護師の人数が多く、設備などの基準も決められています。高度な医療は必要なくても地域の医療としての役割を果たすのが診療所です。
病院と診療所の違いの一つ目に、病床数があげられます。病床が20床より多い施設を病院、20床より少ないまたは病床を持たない施設のことを診療所といいます。実際は診療所に病床がある場合は少なく、多くの診療所が無病床となっています。
・病院の中でも医療費において違いがある
医療施設は病院と診療所に分かれているということをご紹介しましたが、同じ病院というくくりの中でも病床数によって医療費が異なる仕組みになっています。診療所では治療を行えないような場合に、診療所の医師から紹介状をもらって病院を受診するというケースがあります。紹介状を持たずに400~500床以上の大病院を受診すると、特別料金の対象となります。
病床数が200床以上の規模であっても、特別料金が徴収されることもあります。国が決めたことではありませんが、病院の裁量で徴収できるため、受診する前にホームページなどで基準を確認する必要があります。病院の中でも200床未満であれば特別料金がかかることはありませんが、必ずしも大きい病院だから安心だということはなく、軽い病気やケガであれば診療所でも対応できることも知っておくようにしましょう。
◼ それぞれの役割や機能
病床数によって病院と診療所に違いがあり、病院の中でも医療費において違いがあることが分かりました。病院にどのようなイメージを持っているかは人それぞれだと思いますが、病院と診療所それぞれの役割や機能についてもご紹介します。
・病院
一言で病院といっても規模や環境はさまざまですが、大きく分けると外来の患者様を診察する機能と入院して治療などを行う機能の二つがあります。また近年高齢化が進んでいることから、在宅医療も重要になってきています。
患者数の多くが利用したことがあるのは外来診療かと思います。受付をして診察や検査を行ってお会計をして帰るのが一般的な流れです。夜間や休日の診療や救急車で搬送された患者様の治療なども外来の一つです。入院に至る経緯としては、外来の診察や診療所の医師による紹介で入院治療が必要だとされた場合などが考えられます。患者様の状態や検査によって治療計画を作成し、治療が進んでいきます。
在宅医療は患者数が病院に行くのではなく、お医者さんや看護師などのスタッフが患者様の家や施設を訪問する仕組みです。病院に通うことが難しい患者様でも医療を受けることができるため、在宅医療は高齢化と共に必要性が出てきています。
・診療所
診療所は病院と違って高度な医療を受けられるわけではありませんが、だからといって医療の質が悪いというわけではありません。軽い病気やケガであれば地域の診療所で十分な医療を受けることができます。症状が軽いにもかかわらず大きな病院を受診すると、症状が重い患者様の病院での待ち時間が増えてしまいます。患者様が症状によって病院と診療所を使い分けることで、スムーズに医療を提供することができます。
◼ 病院の組織
病院の組織は規模によっても異なりますが、診療と看護、医療技術、事務の4つで構成されているのが一般的です。その他にも専門領域があることもあり、規模が小さい病院では兼業されていることもあります。それぞれの部門についてご紹介します。
・診療部門
専門科目だけを診る診療所と異なり、病院ではさまざまな科目の医師が集まっています。診察部門には各科目の医師が集まっており、情報共有や研修などが行われます。治療を行う際には、お医者さんだけではなく他の専門的な職種の人とチームで医療を行うことが増えてきています。とはいえ治療方針を決めたり治療を施したりするのは医師なので、病院の中でも重要な役割だといえます。
・看護部門
看護とは、健康を取り戻して質の高い生活ができることを目的とした支援を行うことです。治療を行うのが医師であるのに対し、看護師は患者数自身が持つ治癒力に働きかけたり回復しやすい環境を整えたりすることで、病気の予防や健康の保持を支援する役割があります。異常がないかどうかの観察や患者様の食事のお手伝いをしたりといった業務もあります。お医者さんの指示で治療の補助を行ったりすることもあります。患者様にとって一番近い存在であることが多いため、ただ業務をこなすだけではなく不安や悩みに気付いて接することも求められています。
・医療技術部門
医療技術部門には薬剤科や検査科、放射線科、リハビリテーション科、栄養科などさまざまな科目があります。薬剤科の役割は正しい情報を基に品質が保証された医薬品を提供すること。どんなに効果の高い薬剤であっても副作用があり、全ての患者様に有効というわけではないため、副作用を防いだり医師と連携して薬剤の情報を提供したりすることを徹底することが期待されています。
検査科では血液や尿などに含まれる物質を検査する生化学的検査や血液学的検査、アレルギー検査、微生物検査、病理学検査などの多岐にわたる検査を行います。放射線科はX線撮影やCT、MRIといった撮影を行って、画像から異常を発見する画像診断と放射線治療の2つを主に行います。リハビリテーション科には理学療法士や作業療法士などの専門家が属しており、身体機能や社会適応力を回復させるためのリハビリテーションを行います。栄養科は患者数の食事を担当するだけではなく、指導も行います。
・事務部門
事務部門では人事や経理、総務などに担当が分かれており、病院の経営をサポートする部門となります。病院で働くスタッフが働きやすい環境を整えることが事務部門の役割です。診療所は院長と数名の医師や看護師、受付などで構成されており、医師が事務作業も行う必要があります。しかし規模の大きい病院では一人で医療行為と事務作業を行うことが難しくなるため、事務を総括する部門が存在します。
・その他
他にも医事課や医療相談室、情報管理部門、地域連携室、経営企画室などのさまざまな部門に分かれています。医事課では受付や会計、手続きなどを行い、医療相談室では患者様の悩みを聞いたり相談を受けたりすることで問題解決を目的としています。情報管理部門は児医療情報システムの運営や管理、診療内容の記録や点検などを行っています。また一つの医療機関だけで患者様を診るのではなく、治療や介護を一貫したサービスにできるように地域で連携することが求められています。病院の経営を支援する経営企画室や感染対策に関する委員会などもあります。
◼ 開業医を目指すなら
病院で勤務医として働きながら、開業医を目指しているお医者さんも少なくないことでしょう。診療所を開業するまでには、物件選びや設備の選定、外観や内装のデザイン、スタッフの採用、広告宣伝など多くのステップを踏まなければなりません。そのため開業医を目指すのであれば、十分な準備期間を設定して開業の準備を進めていく必要があります。診療所の開業はお医者さんにとって人生最大のイベントといっても過言ではありません。岡部克哉建築設計事務所では、「自分が施主様であればどうするか」を常に考えながら設計・監理を行っています。施主様と設計事務所が二人三脚で診療所を作っていけるような関係性を築いてまいります。
◼ まとめ
医療を受けるための施設には病院と診療所の2つがありますが、一般的にはどちらも病院と呼ばれることがあります。病院と診療所との違いは病床数であり、病院の中でも病床数によって医療費が異なる場合があります。病院は病床が20床以上の施設のことをいい、診療所は20床未満または無病床の施設のことをいいます。病床数400~500以上の病院では紹介状なしの受診で特別料金を徴収される仕組みになっており、200床以上の病院でも徴収されることがあります。
また病院と診療所は役割や機能も異なります。病院には大きく分けて外来診療と入院治療、在宅医療の3種類があります。多くの人が利用したことがあるのは外来診療かと思います。外来診療で入院が必要だと判断されると入院することになります。病院に通院できない高齢者などのために家や施設に医師が出向く在宅医療も増えてきています。病院には診療部門や看護部門、医療技術部門、事務部門などで構成されており、小さい規模の病院では兼業されることもあります。
岡部克哉建築設計事務所では、診療所の設計や監理を行っています。診療所は地域の医療を支える役割もあるため、患者様が居心地良く過ごせるような環境づくりも大切です。外観や内装のデザインはもちろん、スタッフと患者様それぞれにとって使い勝手の良い設計や過ごしやすい環境を整えることも心がけています。施主様のご希望をお伺いしながらプランを作成してまいりますので、診療所の開業を検討されているお医者さんは、ぜひ岡部克哉建築設計事務所にご相談ください。