医院開業に必要な資金とは?科目ごとの違いも知っておこう
医院を開業するための資金は、形態やコンセプト、科目によって異なります。物件にかかる費用や内装、外装、経営のための資金、広告宣伝費など、必要な資金としての項目はさまざまです。また科目によってもその性質が異なり、必要な設備の種類だけではなくグレードも変わってきます。医院開業に必要な資金の項目と科目ごとの違いについてご紹介します。
◼ 医院開業に必要な資金
医院を開業しようと考えている場合、開業にどれだけの費用がかかるのかが気になるお医者さんも多いことでしょう。物件や医療機器、広告宣伝費など、ぱっと思い付くだけでも費用がかかりそうな項目ばかりです。開業計画のはじめに、必要な資金を項目ごとに把握しておくようにしましょう。
・敷金・礼金
医院を開業するときには、戸建てかビルのテナント、医療モールの3つの中から形態を選ぶのが一般的です。戸建ての場合は自分で建てることになるため、建築費用やデザイン費用などがかかります。ビルのテナントや医療モールの場合は賃貸であることがほとんどなので、契約する際に敷金・礼金が必要となります。
敷金は賃貸借契約における担保となるものであり、礼金は貸主に対する謝礼です。事業用物件の敷金は家賃の6~15ヶ月分に設定されていることが多く、契約終了時に返金されることが多いですが、契約内容によって異なる場合もあります。契約書に返金の文言が記載されているかどうかを確認するようにしましょう。礼金は敷金と違って返金されることはありません。地域や物件によって相場は異なりますが、1~3ヶ月分が一般的です。
・家賃
賃貸の物件を借りて医院を開業する場合は、毎月決まった額の家賃を支払います。また一般の住宅と違って事業用として使用するため、事業用建物賃貸借契約という契約を結びます。契約の際に提示される家賃は絶対に従わなければならないものではないため、交渉次第で安くすることもできます。近隣の相場を調査した上で、傾斜家賃などにしてもらえないかどうかなど交渉をしてみると良いでしょう。
・外装・内装
外装は戸建ての物件に限られるかもしれませんが、戸建てとテナント関係なく内装にこだわりを詰め込むことができます。清潔感が大事であることから昔は白か水色のような色合いの内装が多かったですが、最近では落ち着いていれば他の色を使っているデザインも見受けられます。見た目はもちろんですが、清潔感がありながら掃除をしやすい、衛生的な空間にできるように心がける必要があります。
・経営資金
医院を開業してすぐは患者様がたくさん来てくれるとは限らないため、売上が少なかったとしても人件費や家賃を支払えるだけの経営資金を用意しておく必要があります。せっかく念願の医院を開業しても、経営が上手くいかずにスタッフのお給料を支払えないといったことになっては困ります。どのくらいの額必要であるのか、期間なども事前に計算した上で経営資金を用意しておくようにしましょう。
・医師会入会金
医院を開業するにあたって、医師会に入会するべきかを悩んでいるお医者さんも多いかもしれません。医師会に入会すると健診や予防接種といった自治体による医療業務の委託を受けることができます。小児科であれば学校の健診、婦人科であれば子宮頸がんの検診などを委託される可能性があります。こういった委託を受けることで広告宣伝の役割を果たしてくれるため、収入を増やすことができるという点でメリットだといえます。
その一方で診療以外の業務が増えてしまうのがデメリット。休日当番医や夜間診療を請け負わなければならないこともあります。プライベートの時間を大切にできることが開業医のメリットでもあるため、診療以外の時間にも仕事をしなければならなくなることを頭に入れておく必要があります。医師会に入会すると年会費が高額になるので、メリットとのバランスを考慮した上で選択するようにしましょう。
・広告宣伝費
医院を開業しても、地域の人に医院の存在を知ってもらえなければ患者様を集めることができません。開業にあたって看板の設置やチラシ配り、ホームページの作成など、広告宣伝のためにやるべきことはたくさんあります。今の時代はインターネットで検索する人が多いため、ホームページは絶対に必要なツールだといえます。チラシは近隣の住宅にポスティングするものや新聞に折り込むものなど種類があります。医療法によって広告規制が定められているため、記載できる内容を予め確認しておくようにしましょう。
・消耗品
診察券や筆記用具、事務用品、医薬品などの消耗品も用意しておく必要があります。一つ一つは高額でなくても、種類や数がたくさん必要なので蔑ろにできる額ではありません。使用頻度の高いものからリストアップし、仕入れだけではなく在庫管理もしっかり行うようにしましょう。
◼ 科目ごとの違い
医院開業にかかる費用は、診療科目によっても異なります。それぞれの科目の特徴や必要な費用の違いについてご紹介します。
・内科
街で医院を見かけるとき内科が多く感じられることはありませんか?内科は競合が多いため、専門性を打ち出すことが大切です。循環器内科や呼吸器内科といった専門医の資格があったとしても、風邪やインフルエンザの症状を診てもらいたい患者様に来てもらえるように「内科」と表記することも忘れないようにしましょう。必要な設備は超音波診断装置、心電図、内視鏡など。土地や建物だけで2500万円~、設備で1800~3500万円が相場となっています。
・整形外科
整形外科はリハビリを行う場合が多いため、資格を持ったスタッフをそろえる必要があります。さまざまな職種のスタッフを採用するため人数が多くなり、人件費が高くなってしまうのが整形外科の特徴です。またスペースも必要なので土地や建物だけで3000万円~、設備に2000万円~が相場となっています。必要な設備はX線撮影装置、超音波検査装置、低周波治療器、平行棒など。
・眼科
眼科は治療内容の範囲によって費用が変わってきます。白内障などの手術を行う場合は機器を揃えなければならないことやスペースが必要であることから、開業費用が高くなってしまいます。また目が不自由な方が来られる可能性が高いため、他の科目と比べてバリアフリーである必要があるといえます。必要な設備はスリットランプや自動視野計、眼底カメラなど。土地や建物だけで3000万円~、設備に2000~45000万円が開業資金の相場です。
・皮膚科
皮膚科は男女問わずお子様から高齢の方まで幅広い年齢の方が来院されます。地域によって違う場合もあるため、開院してすぐはどの層が多いのかなど患者様の観察をした上で戦略を立ててみると良いでしょう。最低限の診察は少ない設備で行うことができますが、美容系の機器を導入すると高額なので、購入するかどうかは開業後に決定しても良いかもしれません。美容機器を除くと、必要な設備は顕微鏡や無影灯などがあげられます。土地や建物で1200万円~、設備で500万円~が相場となっています。
・精神科・心療内科
精神科や心療内科は専門的な治療を行わない限り、設備への投資が少なくて済むのが特徴です。そのため開業費用は他の科目と比べて安く抑えることができます。その一方で医院の数が増えているため、どのように違いを打ち出すかを検討する必要があります。必要な設備は他の科目と共通である電子カルテやレセコンなど最低限のもので診療を行うことができます。土地や建物で1000万円~、設備で400万円~が相場となっています。
・耳鼻科
耳鼻科はお子様が来院されることが多いですが、少子高齢化を見据えて高齢者の患者様にも狙いを定めるのか、お子様の数を減らさないようにするのかを決める必要があります。患者数が多い傾向にあるため、短い時間で診察の数をこなすことが必要です。必要な設備は耳鼻科診察ユニットやネブライザー、聴力検査室、内視鏡など。土地や建物で3000万円~、設備で2000万円~が相場となっています。
・小児科
小児科は文字通りお子様と付き添いの親御さんの来院がメインなので、車や自転車を停めるスペースを確保することをおすすめします。感染症で来院される可能性もあるため、玄関を2つ分けて作られる場合もあります。必要な設備は電子カルテやレセコンの他に、X線撮影装置や超音波診断装置、心電図など。土地や建物で3000万円~、設備で1000万円~が相場となっています。
・産婦人科
産婦人科は女性の患者様が来院されることが多いため、女性の医師が所属していることがメリットになる場合があります。特に妊娠初期の女性はホームページを見て医院探しを行う方が多いため、予約制を導入すると患者様を獲得できたりスムーズに診察を行えたりすることでしょう。必要な設備は診察用のベッドやイス、内診台、超音波診断装置など。土地や建物で3000万円~、設備で2000万円~が相場となっています。
◼ まとめ
医院を開業するにあたって、どのくらいの費用が必要であるかははじめに知っておきたいことの一つですよね。物件を借りるための敷金や礼金、家賃はもちろん、外装や内装の工事費用、医師会の入会費、消耗品費用なども必要です。患者様に来てもらうための宣伝広告費や、開業してすぐの経営資金なども用意しておくようにしましょう。また診療科目によっても必要な資金が異なるため、特徴と共に資金についての知識も身に付けておきたいものです。
岡部克哉建築設計事務所では、医院の設計やデザインを行っています。見た目はもちろん、使い勝手や快適な空間であることなどにも配慮した医院作りを心掛けています。自分が施主様であったらどうするか、施主様の立場を考えながら設計や監理を行っています。医院の開業を検討されている場合は、施主様とパートナーとして医院を作っていく岡部克哉建築設計事務所にご相談ください。